BL小説(TIGER&BUNNY編3)

□☆【虎兎】とある素敵な日々
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『誠の恋をするものは、みな一目で恋をする。』
byシェークスピア


バーナビーはふとその言葉を思い出していた。
彼の仕事の相棒、ワイルドタイガーこと、鏑木・T・虎徹。
彼と初めて出会った時、なんて古い考えの持ち主なんだと思った。
自分のヒーロー論を無理矢理押し付ける彼にバーナビーはイライラした。
今までスルースキルが高いと思っていたバーナビーには珍しく、感情のまま口にしてしまったのだ。古いと。
仮にもベテランヒーロー、しかも同じ能力。
仲良くした方が賢明だと考えていたのに…出来なかった。
今、思えば、もしかしたら自分は最初から彼に対して心を開いていたのかもしれない。
初めから取り繕う事も出来ずにいたのだから…


「こういうとこには仕事じゃなくて遊びで来たかったよな〜」

アイパッチを付けたままでTシャツに短パンとラフな格好をしている虎徹が大きく伸びをしながら愚痴る。
バーナビーはその傍らでヘアメイクのジョディに髪をセットされていた。

「贅沢言わないで下さいよ、虎徹さん?仕事とはいえ、こんな素敵なリゾート地に来られたんですから」
「わぁーってるよ〜」
「それにしても最近はこういった撮影などに文句を言わなくなりましたね」
「ん〜…?」
「前までなら"こんなのヒーローの仕事じゃねぇ"とか言ってたでしょ?」
「今でもそれは思ってんだけどさ〜」

隣で座っている虎徹が目の前の鏡越しにバーナビーを見る。
その瞳にバーナビーは一瞬ドキリとした。

「まぁ〜…バニーとならちょっとくらいいいっかな〜って思ってさ」
「…っ?!」
「な〜んてな!」

ニコッと白い歯を出し笑う虎徹にバーナビーは顔を背ける事も出来ず、視線だけを逸らす。

バーナビーと付き合いだしてから虎徹はこういった事を言う事が多くなった。
誰かと付き合う事が初めてなバーナビーにとっては虎徹のこういう類の言動は正直心臓に悪い。
どう対処していいのか分からず視線を逸らす事しか出来ないでいた。
照れたように顔を逸らすバーナビーを虎徹は優しく微笑んで見つめている事をバーナビーは知らない。

「タイガーさん、バーナビーさん。そろそろ撮影始めま〜す」

スタッフの声に2人は返事をし、撮影現場へと向かった。


今回の撮影はヒーローの休日。
リゾート地での撮影でTシャツに短パンや水着といった夏らしい格好である。
以前、水着の撮影で虎徹は全身水着を着せられた事があったが今回は違う。
今の虎徹は以前のバーナビーの添え物といったイメージとは違い、大人の男として街中に認識されていた。

…虎徹さんの魅力を世間にバレてしまった…僕だけが知っていた事なのに…

バーナビーはカメラマンの指示通りの動きをしながらチラリと虎徹の様子を見た。
日に焼けた素肌。逞しい胸板。海水をスタッフに掛けられて余計に色気が増した肉体。
濡れた髪を無造作に撫であげる仕草。
アイパッチの奥に光る琥珀の瞳。
バーナビーでなくとも、そこにいた女性スタッフのほとんどがうっとりと虎徹を見つめていた。
女性スタッフの眼差しに気付かず虎徹はバーナビーに話し掛けている。
少しイラッとしたバーナビーは皮肉めいた言葉を口にする。

「見られていますよ?」
「ん〜?」

バーナビーに言われ、虎徹は回りを見回してみた。
バーナビーの言う通り、見られている気がする。
虎徹と目が合うと女性スタッフは頬を赤らめてそそくさとその場を離れて行った。

「ん〜?アレ、バニー見てたんじゃねぇか?」
「……鈍感」
「へ?」
「…でも…良かった…」
「はぃ〜?」
「なんでもありません」

なんだよ〜?と問うてくる相棒を無視しながらもバーナビーは心の中で安堵のため息をついていた。


虎徹のNGはあったもののなんとか日が暮れるまでに撮影は終了した。

「はぁ〜…疲れた〜」
「お疲れ様でした、虎徹さん」
「おぉ〜お疲れ〜バニー」

撮影を終えた2人はスタッフが取ってくれたホテルのエレベーター内にいた。

「明日も朝から撮影か〜」

腕を頭の後で組み、ため息を漏らす虎徹。

「仕方がないじゃないですか?今回の撮影に朝日が必要だって…」
「わぁ〜ってるよ〜。だけどさ〜、こんなリゾート地に来てて遊ぶ事も出来ずに帰るのか〜って思ったらさ〜」
「僕は嬉しかったですよ?」
「へ?」
「例え仕事であろうと貴方とこんな素敵な場所に一緒に来られたんですから」
「バニー…」
「だから、僕は…嬉しかったですよ?」

隣にいるバーナビーは少しだけ頬を染めてはこかむように笑う。
その微笑みにドキリとした虎徹は頬を掻いてそっぽ向いた。

チーン…

自分達の泊まる階にエレベーターが泊まる。
無言でエレベーターを降り廊下を歩く。
スタッフによって一部屋ずつ与えられていた二人は隣同士の部屋の扉の前に立つ。

「…それでは明日…」
「…お、おぉ…」

ぎこちない雰囲気が漂うフロア。

「…明日、ちゃんと起きて下さいね?」
「…わぁーってるよ」


別れ難いと思ったバーナビーはその場から離れられずにいた。

「…あ、あの…」
「……」
「……僕の部屋で…飲みませんか?」

バーナビーの突然の誘いに虎徹は目を見開いた。
確かに虎徹もこのままバーナビーと別れて部屋に戻るのが嫌だった。
ただ、翌朝からの撮影を考えると引きとめるのもなんだし…と珍しく気を使っていた。
バーナビーの誘いが嬉しくて、次の瞬間にはその腕を掴み、部屋へ強引に入ってしまった。

バーナビーを引っ張る様に中に入り、部屋のドアが閉まると同時にバーナビーの身体をドアに押し付けた。

「こ、虎徹…さん?」

驚くバーナビーに虎徹は何も言わず、その唇を奪った。

「…んっ、んんっ…あっ…あなた、なに、を…?!」
「黙ってろ」
「…んっ…」

反論しようとするバーナビーの唇を再び奪うと虎徹はバーナビーの身体を抱きしめ、より深いキスをした。
バーナビーの口内に舌が侵入し、絡めていく。

「…んくっ…んんっ…」

くぐもったバーナビーの声。
バーナビーの舌に絡めつつ、虎徹はバーナビーの身体をまさぐる様に撫で回す。
虎徹の手がバーナビーの肌に触れた時にはすでにバーナビーのペニスが芯を持ち始めていた。
お互いに服を脱がせながら荒い息を吐き、部屋の中へ入っていく。

「…んっぁ…」

寝室に着くとバーナビーの膝裏にベッドの角が当たりそのまま倒れ込むようにしてベッドにダイブした。
トロンとしたエメラルドの瞳が虎徹を見上げる。

「ばにぃ…」

唇にかかった金色の髪を指で拭う。
そのまま唇に指を這わせるとバーナビーの唇から紅い舌が見えた。
虎徹の指を一舐め、じっと見つめる。
その瞳に虎徹の喉が鳴る。
ゆっくりと指をバーナビーの口の中へ侵入させるとバーナビーはその指を舐め始めた。
ペチャペチャとイヤラシイ音が室内に響く。

「…エロ…」

口に入れた指をそのままに虎徹はバーナビーの首筋へと唇を這わせた。

「んくっ…ふっ…ン…」

指を舐めながら漏れる吐息。
バーナビーの足の間に膝を割って入りこむと経ち上がったバーナビーのペニスを刺激した。

「んぁっ…」
「もう感じてんの?」
「…やっ、ら…」
「…や〜らしいな〜バニーちゃん」

グリグリと膝で更に刺激を与え、口内の指を回す。
シーツを握っていたバーナビーの手が虎徹の腰に触れる。

「くっ…」

腰から下へ辿り、虎徹のペニスへと手を伸ばしたバーナビーの手。
すでに膨らんでいるソレに触れると虎徹から喘ぎが漏れた。
バーナビーは口の中にある虎徹の指を引き抜くとそのまま自分のペニスへ促し、

「…直接、触れて?」
「お、まえ…反則ソレ…」

バーナビーのペニスを握りつつ、掴まれている自分のソレを近付ける。
重ね合わせた二つのソレらを器用に掴んで刺激を与えた。

「ア、ンッ…イっ…」

2人で扱き合い、唇を重ね、舌を絡ませて、快感がせり上がっていく。

「…んっ…くっ…」
「んんっ…あっ…や、もっ…イ…」
「…んっ、ばに、イケ…」
「あ、なたも…一緒にっ…」
「…んくっ…んんんっ…−−−−…」
「はげしっ、やっ、もぅっ…んん…あぁぁぁぁ…−−−−」




何度も抱き合った虎徹とバーナビーは汗と唾液と精液でベトベトのままベッドに横たわっていた。

「大丈夫か?」

目を覚ましたバーナビーに虎徹が優しく声を掛ける。

「がっついてちまってごめんな」
「…いいえ…僕も欲しかったから」

虎徹の胸に頬を擦り寄せる。

「…ねぇ、虎徹さん」
「ん〜?」
「今回の写真、使ってほしくなかったんですよ、僕」
「は?なんで?」
「だって…貴方の色気がとんでもなく出ているから…その色気は僕だけが知っていたのに…他の人に見られるなんて…」
「色気って、お前…」
「今日も現場にいた女性スタッフたちも貴方に釘付けだったし…」

胸に顔を埋めて顔を隠すバーナビー。
その頭の虎徹はキスを1つ落とし、

「撮影中、そんな事考えてたのバニー?」
「……」
「バカだな〜」
「…誰が馬鹿ですか?」
「もし、俺に色気が出てたってんなら、それはお前のせいだ」
「……は?」

驚いたバーナビーは顔を上げるとニコリと笑う虎徹がいた。

「俺らの休日って設定で撮影して、目の前にお前がいんだから当然お前を想いながらカメラも見んだろ?」
「…そ、それは」
だからお前のせいだっての。それに…」

ちゅっと音を立ててキスをして、

「そんな可愛いヤキモチ妬いてくれてたんだって思ったらまたお前を抱きたくなっちまう」

虎徹はそう言いながらバーナビーに覆い被さると髪を撫で、またキスをした。

「……明日早いんですから、駄目ですよ?」

バーナビーの言葉を無視するようにキスの雨が降り続けた。



翌日。
2人揃って遅刻してしまい、朝日に間に合わなかったのは言うまでもない。



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