BL小説(TIGER&BUNNY編3)

□【虎兎】バニ誕2014
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今年は際再結成して初めての僕の誕生日。
色々あったけど彼の隣に戻れた事が何より嬉しい。


「バニー、今年の誕生日は何が欲しい?」

「え?特に欲しい物はないですよ?」

「えー⁉︎せっかくの誕生日なんだから、なんか欲しいモン言えよ〜?」

「貴方がいれば何もいらないですから」

「だっ⁉︎…そーいー事言うな!」

「は?」

「……無自覚かよ」

頭をガシガシ掻き、顔を背けて呟く。

…本当の事なのにな…

「と、とにかくだ!なんか欲しいモン言えって!して欲しい事でもいいから!」

…して欲しい事…

「…それじゃあ…一つ…」

「なに、なに?」

「…当日は僕と過ごして下さい」

「へ?」

「誕生日当日はハロウィンイベントに参加しなきゃいけないし、疲れてるかもしれませんけど…貴方と一緒にいたいから…」

言ってから気がついた。
もしかしたらワガママだったかな?

俯いた僕は虎徹さんの顔を見れなかった。
いたたまれなくて席を立つ。

「…ちょっと、すみません…」

席を立ちオフィスを出ようとした僕は腕を掴まれた。

「当たり前の事、言うな」

「…っ!?」

腕を引かれ耳元に唇を寄せ、

「俺の大事なヤツの誕生日だぞ?一緒にいるに決まってんだろ?」

囁かれ、小さく耳にキスを落とす。
思わず吐息が漏れる。

すぐに腕を解かれて離れる彼はニヤリと口角を上げて笑っていた。




どうして、あんなにかっこいいんだろう?

いくら女史がいなかったとはいえ、オフィスであんな事しないで欲しい。
オフィスじゃなかったら僕は…抱きついて、抱いてと懇願していたかもしれない。

トイレの鏡に写る僕の顔は真っ赤になっている。
水で顔を洗い、熱を冷ます。

「…ヤバイな…まだ顔が熱いや…」




ハロウィン前日。
今日は2度の出動があった。
立て続けに起きた事件で僕らの身体はクタクタになった。

「…じゃあ、明日な?」

「はい。お疲れ様でした」

流石に疲れたのかアクビをしながら手を振る虎徹さん。

本当はこのまま僕の家に来て欲しいけど、明日一緒にいてくれる約束をしたし…ワガママは言えない。
少し残念だけど、明日を楽しみに今日はモノレールの駅で別れた。

今日は歩きたい気分。
駅の改札で虎徹さんと別れて、家の方へと歩き出す。

街はハロウィン一色。
かぼちゃや魔女のハット形の飾りがあちらこちらにある。

「…ハッピー、ハロウィンか…」

ここ数年だ、イベントを楽しく過ごせるようになったのは…

…そう言えば彼に出会ってからだな…

誕生日も、ハロウィンも、クリスマスも…
そういうイベントには必ず彼がいる。

「…虎徹さんには一番にお祝いを言ってほしかったなぁ…」

小さくため息をついて夜空を見上げるとオリオン座が輝いていた。



帰って来て、途中で適当に買ったデリを摘まんでチェアにくつろぐ。
大きい画面には小さい頃の僕が両親とサマンサおばさんに祝って貰っている動画を映っている。

『ハッピー、バースデー!ジュニア』

僕の頬にキスをする両親。
サマンサおばさんもにこやかに拍手をしてくれている。

誕生日前日の晩。
必ずこの動画を見ていた。
20年、目的を見失わないように…両親を殺した犯人に復讐するという目的を…

『私達の可愛い子…このまま素直ないい子でいて…』

優しく僕を抱きしめる母さん。

ごめんね母さん。
僕は素直ないい子ではいられなかったよ…
本当に…ごめん…


ピンポーン!


こんな時間に誰だ?

知らない間に流れていた涙を拭い、モニターに来客を映す。
映し出された真っ黒な画面から声だけが聞こえてきた。

『バニー!開けて!』

「虎徹、さん?」

『おぉ!』

え?…どうして?

不思議に思いつつ、ロックを解除し玄関に向かった。

「バニー!」

「え?」

玄関先で虎徹さんを出迎えると僕は驚いて動けなくなった。
いつもの優しい笑顔ではあるけど、身につけている物がいつものそれと違う。

黒のマントにタキシード。
口にはキバをつけている。

え?なんだ?ドラキュラ?
というかなんでドラキュラ??

「トリック オア トリート!」

…………え?

「お菓子くれなきゃイタズラしちまうぞ?」

セリフは子供っぽい癖にやたらとカッコいい。

「バニー?」

「……」

見惚れている僕に虎徹さんは小さく笑って近付いてきた。
大きいマントで僕ごと包み込んで抱きしめてくる。

「イタズラよりお前の血を吸おうか?」

ゾクゾクするような甘い声で囁かれて僕は立っていられなくなった。
膝がガクンとなって力が入らない。
それを支えるように受け止める。

「…大丈夫か?」

腰を抱く腕が強くなる。

「…な、なん、なんですか?」

「ん〜?」

首筋に唇を這わせて聞き返してくる虎徹さん。

ちょっ、…止めて、ください…?!

「どう、して…んっ…」

「ん〜?…だって明日はハロウィンでお前の誕生日だろ?」

「んっ…んんっ…」

「だから仮装してハロウィン味わいつつ、俺をプレゼントってことで…」

…これじゃあどっちがプレゼントだか分からないな…

クスッと笑って彼の頬に両手を添えて見つめる。

「…それじゃあ、まず…貴方からのキスを下さい?」

「…いいよ…それから始めよっか…」

額をくっつけて笑い合い、そして…虎徹さんからのキスを受け取った。





「Happy Birthday Barnaby」

午前0時と共に言われた言葉に僕は微笑んだ。

やはり貴方から聞く祝いの言葉はなにより嬉しい。

今年も貴方と一緒にいられる幸せ。

ありがとう…


どうか…このままずっと…貴方と共に…



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