BL小説(TIGER&BUNNY編3)

□【虎兎】嫉妬
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「お腹が空きました」

助手席で不機嫌な顔のバーナビーが流れる景色を見ながら呟いた。

今日はスポンサーのパーティに呼ばれた虎徹とバーナビー。
虎徹はいつものようにスポンサーに囲まれいるバーナビーを横目にシャンパンやら食事を楽しんでいた。
バーナビーも虎徹はいつもの事だとあまり気にも止めていなかった。
…はずだった…

…何故あの人は…

いつの間にやらマダムに囲まれている虎徹。
バーナビーの目には虎徹が女に囲まれて鼻の下を伸ばしているように見えた。
スポンサーの相手をしながらもバーナビーの機嫌は最高潮に落下していった。


「何食いたい?」

機嫌が悪いのが分かっている虎徹はバーナビーの要望を聞いてみる事にした。

「…貴方が作るんですか?」

不機嫌な声そのままでバーナビーが問う。
虎徹は心の中でため息を吐き、

「俺の作れるもんなら作ってやるよ?バニーちゃんの頼みだしな」

そんな風に言われたら悪い気はしない。
バーナビーも例外ではない。

「…貴方の作るチャーハンが食べたいです…」
「そんなんでいいのかよ」

まぁ、凝ったもんとか作れねぇけどな。と笑って頭を掻いている虎徹。

…あぁ…この人のこの笑顔で大概許してしまうんだ、僕は…

横目でチラリと虎徹を見て、気づかれないようにバーナビーはため息をついた。


バーナビーの家に行く途中でマーケットに寄り材料を調達。
その間もバーナビーは不機嫌で買い物の間もずっと車の中にいた。
家に着く頃には一言も話さない状態で…

虎徹はそんなバーナビーをリビングに残し、キッチンでチャーハンを作り出す。

「…愛想笑いしてるだけってなんで分かんねぇかな〜?」

最近、やたらと女が自分の傍に来る事が多いなとは思っていた。
ヒーロー続けて10数年、女が周りに集まる事などないに等しい虎徹としては戸惑うばかりなのだが、接待をバーナビーに任せっぱなしにするのも気が引けて、バーナビーの負担が軽くなればと考え、頑張って愛想笑いをしていた。
それがどうやら年下の恋人には気に食わなかったらしい。

「案外、ヤキモチ妬きだよな〜」

虎徹はクスクス笑いながらチャーハンを仕上げていった。


2人分のチャーハンを持ち、リビングへ。
すると窓際に佇んでいるバーナビーが一瞬肩を震えた。
それには気づかないフリをして虎徹はチェア近くのテーブルに皿を置き、そのままバーナビーの方へと近づいた。

「バニー、出来たぞ?」
「……」
「…バニー?」

バーナビーの肩越しに窓ガラスに写るバーナビーの顔を見た。
視線を逸らし、どこか拗ねるような顔をしている。

…可愛いな…

後ろから手をバーナビーの腹に回して肩口に顎を乗せた。

「ば〜にぃ?」
「……はぃ」
「出来たぞ」
「……はぃ」
「食わねぇの?」
「……」
「何、怒ってんの?」
「………怒ってません」

原因なんて分かっているのに敢えて気づかないフリをする。
内心、ズルイよな…と思うものの、バーナビーの口から聞きたいのだ。
ヤキモチを妬いたと。

「怒ってるだろ?」
「……怒ってませんったら」

ムキになってバーナビーは顔を上げた。
窓ガラスに写る虎徹を見る。
そこには優しく微笑んでバーナビーを見つめる虎徹があった。

「…っ?!」

優しい琥珀の瞳に胸が高鳴る。
目が離せない。

「…ぁ…あの…」
「ん?」
「………あの女性たちと…楽しげでしたね」
「そぉ〜か?」
「いつもは早々に席を外すのに……」
「まぁ〜…そうだな」
「…気に入った女性でもいましたか?」

不安を口に出したものの、すぐに唇を噛み、口を閉じた。

「バニーちゃん…それってヤキモチ?」
「…っっ!?………それは…」
「…言ってみ?ん?」
「それはっ……やっ、や、…ヤキモチですよ!駄目なんですか!!」
「いや。ダメじゃねぇよ?」

バーナビーの肩口に顎を乗せていた虎徹はすぐそこにあるバーナビーの頬にちゅっとキスをした。
腹まで絡めていた腕を外し、バーナビーの身体を向かい合うように促し、顔を近づける。
鼻先が触れるくらいの距離で、

「バニーがヤキモチ妬いてくれて俺は嬉しい…」
「…こ、てつ…さ…」
「俺ばっかヤキモチ妬いてんじゃねぇかって思ってたから」
「貴方が…ヤキモチ?…嘘…」
「ほんと。バニーの方が俺の何百倍もモテんだから当たり前だろ?」
「…虎徹さんはヤキモチなんか妬かない人だと思ってました」
「俺、そんな大人じゃねぇよ?それに…」

両手でバーナビーの頬を包み込むように添えると、

「俺はバニーしか見えねぇし…他のヤツらなんか目に入んねぇから」
「……ご、めん…なさぃ…」

嫉妬をして虎徹を疑い、八つ当たりをしてしまった。
虎徹にそんな風に言われたバーナビーは居た堪れないのに虎徹の言葉が嬉しいと思ってしまった。
自然と流れる涙。
虎徹はそれすらも綺麗だと思う。
その雫を親指の腹で拭い、口づける。

「…んっ…んぁ、こっ…つさ…チャー、ンが…冷め…しま、ぅ…」
「…今は…バニーが欲しい…」
「んんっ…ちょ、…」

反論しようとするバーナビーの唇を塞ぎ、舌を入れる。
虎徹の服を引っ張り離そうとするも力が入らない。
ストンと窓の縁にバーナビーを座らせ、片手を首裏に這わせ、シャツの裾からもう片方の手を入れた。

「…後で一緒に食おうな?」

トロンとした顔で見上げるバーナビーに虎徹は優しく甘い声で言い、口角を上げて笑った。


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