BL小説(銀魂・ワンピース・メジャー・黒バス編)

□【火黒】せつない恋に気づいて
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side kuroko


入学式。
門をくぐるとたくさんの人が部活の勧誘をしていた。
でも僕の入る部は決めている。
中学もそうだったんだけど…バスケ部。
こんなチビで存在感のない僕はバスケが大好きだった。
キセキの世代と呼ばれた人達に囲まれながら僕は一緒にレギュラーとしてバスケ部に所属していた…
…でも、彼らのやり方はどこか間違っていると思い、途中で辞めてしまった。

「バスケ部って、ここか?」

一際目立つ赤い髪。大きく逞しい身体。

「入りたいんだけど?」

その彼の存在感はまるで…野生の虎…

乱暴に椅子を引き、その大きい身体で腰を下ろした。
受付をしている女子が部の説明をしていると話を遮り、申し込みを書く。
僕も彼の隣に腰を落とし申し込みに記入した。


「あれ?いつの間に?」

僕がバスケ部に名前を書き、その場を去り始めてからそんな声が聞こえた。
やっぱり僕は存在感がないんだな…

…隣で記入していた彼の名前を見た。
火神大我…
立ち去った彼の後ろ姿を見て改めて思った。
…彼と一緒にバスケがしたい…
…これはなんなんでしょうか?
一目惚れというやつなんですかね?

まさかその彼と同じクラスになるなんてその時の僕には思いもしなかったんだ…



「黒子」

火神くんが僕の名前を呼ぶ。
その声がとても心地よくて、何度も頭の中で反復してしまう。

「起きろよ、黒子!」

前の席から僕の肩に手を置き、揺すり起こす。

「…起きてます」
「いや、寝てただろ!?」
「………起き、ました」
「おぅ」
「…おはようございます、火神くん」
「おはよ、黒子」

僕の頭にその大きな手を起き、くちゃくちゃと撫でる。
なんて安心する手なんだろう?
口は悪いけどとても優しく暖かい彼。
その優しさは僕にとって嬉しくもあり、残酷でもある。
何故ならその優しさは僕だけに向けたものではないから…



side kagami

初めはこんなチビがバスケなんかよくやるよな〜って思った。
シュートもろくに決まらない。
ドリブルやディフェンスは人並みで…なんたって存在感がない。
いつの間にかそこにいて、気がつけば消えてる。
キセキの世代と呼ばれた連中に混じってレギュラーだったって聞かされて…正直、嘘だろ?って思った。
けど、先輩とのミニゲームん時にその実力が分かった。
その存在感の無さを利用してパスを回す…誰かが幻のシックスマンって言ってた。

俺の中で一気にあいつに興味が湧いた。

日本のバスケも満更じゃねぇ。
黄瀬んとこと練習試合して、キセキの世代ってのにも興味が湧いた。
あんなつえぇら奴があと4人もいる。
ワクワクする気持ちが抑えれねぇ。

「僕は影だ。君の影になって君と、チームを日本一にします」

黒子はそう言った。
なんか、選ばれた気がした。
何故俺かなんて分からねぇし、もしかしたら誰でも良かったのかもしんねぇ。
けど俺は……それでもいいと思った。



「火神くん…僕は君に謝らなくちゃいけません…僕は嘘を付いてました…」

しばらくして黒子が泣きそうな顔で言った。
キセキの世代を倒す事の出来る人間なら誰でも良かったと。
そんな気がしてたし、アイツらと同種の俺と組む事に合点がいった。

「火神くんは信じてくれました」

黒子は力強く言った。
誠凛に入って良かった。
俺と出会えて良かったと。

んな事、俺はとうの昔に思ってた事だ。
ナメてた日本のバスケ。
軽くプレイ出来ればいいと思っていた部活。
でも誠凛に入って、黒子に出会って、キセキの世代に出会えて…俺は本当に良かった。
そして、黒子…お前を好きになった。



「わりぃ…俺、今好きなヤツいっから…です」

目の前にいる女に俺は頭を下げた。
WCで優勝してから誠凛高校バスケ部は一気に注目を集めた。
その中でもエースの俺は知らない女から告白をよく受けるようになった。
別に女は嫌いじゃねぇし、いいなって思ったら付き合うのも悪くねぇとは思う。
けど今の俺は黒子が好きなんだ。
例え黒子に想いを伝えないとしても、好きな奴がいるのに他の奴と付き合おうとは思わねぇ。
けど、やっぱ好意を伝えてくる女にはちゃんと向き合って断らなきゃならねぇだろ?
想いを伝える勇気…俺にはないその勇気…それを振り絞って告白してきたんだから…


「火神くん」
「黒子!?お前、先に行ったんじゃ…?」

教室に戻ると部活に行ったはずの黒子が自分の席に座り本を読んでいた。

「別に君を待っていた訳ではありません。それに今日は部活はありません」
「は?」
「先輩方が進路指導に呼ばれたみたいで…」

あぁ。なんかそんな事言ってたな。

「と言う訳で帰りましょうか?」

読んでいた本をカバンにいれ、黒子は立ち上がった。



マジバで大量のチーズバーガーを頬張りながら、バニラシェイクを飲む黒子を見た。

ほんと、こいつってちっせぇ動物みてぇだよな〜…

そんな事を思っているとストローで吸いながら上目遣いで俺を見た。
そして、

「火神くん……いぇ…なんでもないです」

何か言いたげな顔をしながら下唇を噛む。

「なんだよ?言いたいことあんなら言えよ」
「……」

いつもなら思ってる事、ズバズバ言うのに…
チーズバーガーを頬張りながら黒子を見ていると、1度伏せた目をもっかい上げた。

「…付き合うんですか?」
「は?」
「…告白されたでしょ?」
「おま、なんで?!」
「綺麗な人じゃないですか?君の好きなタイプですよね、控え目な…」
「……」
「君には勿体ないくらいです」

そう言った黒子があまりに無表情で…

「…なんだよ、お前…俺が女と付き合ったら寂しいってか?」

俺はわざと明るく言ってやった。
すると、

「……」

何か言い返すと思ってたのに黒子は俺をじっと見つめるだけだった。



side kuroko


『俺が女と付き合ったら寂しいってか?』

火神くんの言葉に僕は何も言い返せなかった。
心にぽっかり穴が開いたような…まるで僕が空っぽになったみたいに…

「…く、黒子?お前っ…?!」

慌てたように火神くんが僕を呼ぶ。
火神くんが滲んで見える…

「なんで、泣いてんだ!?」

火神くんに言われて、僕は頬を伝う液体に触れた。
…まさか、火神くんの言葉で泣いてしまうなんて…

「……すみ、ません……帰、ります…」

僕は涙を拭うと急いで立ち上がり、その場から逃げるように店を出た。

マジバから出た僕は無我夢中で走っていた。
とにかくあの場にいたくなかった。
自分から振った話だけれど…それでも、彼の口から女子と付き合うという単語を聞くのが嫌だった。

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

走るのが限界になって立ち止まった所はいつものストバスコートだった。
中に入り、ベンチへ腰掛ける。

「……」

泣いては駄目だ…泣いては駄目だ…
そう思うのに涙が止まらない…
拭っても拭っても溢れてくる…
マジバを飛び出す瞬間に見た火神くんの顔が頭から離れない。
驚いていたけど、とても傷ついた顔をしていた。
…あんな顔をさせたい訳じゃないのに…

「…かぁ、みく…うぅ…」

声に出した彼の名前…僕はいつの間にか、こんなにも彼の事を好きになっていたんだと思い知った。


しばらく泣いて、落ち着いた僕はすっかり暗くなった空を見上げた。

『俺が女と付き合ったら寂しいってか?』

「…寂しいに決まってるじゃないですか…」

火神くんの言葉が頭の中に響き、思わず口をついた。
僕とは違う誰かが彼の隣で笑って、それを彼も愛おしそうに目を細めて見つめて…
でも、僕のこの気持ちは隠さなければならない。
同性からの好意なんて火神くんに迷惑がかかる。
きっと優しい火神くんの事だから、それでも仲間として、相棒として傍にいさせてくれるかもしれない。
けれど、嫌われたら?気持ちが悪いって思われたら?
そんなのは絶対嫌だ。耐えられない。
チームにも迷惑がかかるし、僕もバスケどころじゃなくなる…

「…ふ」

…人に迷惑がかかるなんて思いつつ、僕は自分の事しか考えられないんだと気付き、思わず笑った。

…明日、ちゃんと笑って会えるようにしますから…火神くん…どうか、嫌わないで…

「…黒子!!」

僕を呼ぶ声がして、振り向くとそこには…

「…か、がみ…く…ん…」

どうして、君が…?

肩で息をしながら大股で近づいてくる火神くん。
その顔はコートのライトでよく見えない。
目の前まで来た火神くんは手を振り上げた。
咄嗟に目を閉じるとフワリと頭の後ろに大きな手を感じた。
そのまま引き寄せられ、気がつくと火神くんの匂いに包まれていた。

「…お前っ…急にどっか行くなよ…」

まだ息の荒い火神くんは息も絶え絶えに呟く。

「…どぅし、て…?」

動く事も出来ない僕が問いかけると大きく息を吐いて、

「…うるせぇ!俺がどんだけ探したと思ってんだ!バカ!」
「バカガミに言われたくありません」
「てめぇ!」

火神くんに抱きしめられながら、いつもの軽口を叩き合う。
その雰囲気がとてもおかしくて僕は思わず笑ってしまった。


「…なぉ」

しばらく笑い合った後、火神くんが口を開く。
少し緊張した声色…でも、とても優しく温かい…

「…俺、女と付き合わねぇからな…?」
「……」
「……お前の事、好きなのに…他のヤツなんか目に入いんねぇよ」
「え?」

優しく紡がれる言葉に僕は思わず顔を上げた。
顔を真っ赤にしながらも僕を見る紅の瞳と緩やかに上がる口角。

「…いま、なんて…?」

誰が…誰を好き?…まさか…僕…?

「…お前だってーの…他に誰がいんだよ…?」
「……う、そ…でしょ…?」
「誰がウソなんか付くか!」
「だって…、そんな…こと…」
「…黒子」
「……」
「…俺は…お前の事が好きだ…」
「…か、ぁみ、く…」

こんな事があっていいのだろうか?
こんな都合のいい事…でも…今、火神くんははっきりと言ってくれた…僕が好きだと…
あぁ……僕はなんて幸せなんだ…

「……ぼくも、…きみのことが……すきです…」
「…泣くなよ…」

困ったように笑い、火神くんはゆっくりと唇を寄せた。




おわり……
 

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