BL小説(TIGER&BUNNY編1)

□【モブ→虎兎】貴方の隣にいるのは俺じゃない。
2ページ/13ページ

「何じっと見てるんです?」

僕は事務所でカタカタとキーボードを叩きながら隣のおじさんに声を掛けた。
わざとらしく驚く虎徹さんをチラリと見た。

「なんで分かったの、バニー?」
「・・・分かりますよ。そんなじっと見ていたら。」
「・・・凄いのな。顏の横にも実は目あんじゃねーの?」

そんなのあったらもはや宇宙人ですよ、おじさん?

「で、書類は終えたんです?貴方の賠償金の書類ですよね?」
「うぅ〜・・・」
「虎徹さん?」
「いや、まだ・・・」
「後30分後には出ないと取材に間に合いませんよ?」
「・・・明日しちゃ〜・・・・・駄目だよな・・・」
「駄目です。」
「バニィ〜〜。」

そ、そんな甘えた声で訴えても駄目ですよ!
・・・っっ・・・そ、そんな・・・子犬みたいな目をしたっ・・・て・・・

僕は深くため息をつき、こめかみを押さえた。
首をふるふると振ってブリッジに手を掛けると

「・・・半分手伝いますから、後はなんとかして下さい。」
「さんきゅー!さすがバニー!!」

ばさばさと書類を一纏めにすると僕のつくえに置いた。

ふにゃふにゃな顔、しないで下さい。
・・・可愛いんだから・・・

書類を受け取って一通り目を通す。
これなら10分くらいで片付くと計算し、今取りかかっているモノを片付け始めた。
その間も虎徹さんは半分以下になった書類と格闘しながらもチラチラと僕を見ていた。


取材も終わり、僕は虎徹さんと外食しようという事になったのでシルバーステージを歩いていた。

「バニー、何食いたい?」
「そうですね。気分的にあっさりした感じがいいですね。」
「じゃあ、随分前に連れてった和食の店行くか?」
「あぁ。あの老夫婦がやってらっしゃる所ですか?」
「あぁ。」
「それはいいですね。なんか久しぶりだな〜。」

そのお店は僕がまだ虎徹さんと付き合う前、虎徹さんに強引に連れて行かれた店の1つ。
優しい老夫婦が営んでいるその店は高級感はまるでないけど、
どこか心温まる雰囲気が漂っている。
それは多分ご夫婦が作りだす雰囲気と創作料理がそうさせているんだろう。

「バニー、あそこ気に入ってたんだな。」
「えぇ。とても雰囲気が良いし、ご夫婦も好きなんで・・・」
「そうだったの?俺、初めて聞いたけど?」
「そ、それは・・・まだあの時は貴方の事、よく思ってなかったものですから・・・」

あの日から彼の事が気になりだしたなんて彼は知らない。
だから言っていなくて当然だ。

「そうだったな。あん時のバニーちゃん、ツンツンしてたもん。おじさん傷ついてたんたぜ〜?」
「そうだったんです?」

知らなかった・・・
あの時は僕自信、余裕がなかった。
復讐の為だけに生きていて、せっかくヒーローデビュー出来たっていうのにコンビを組まされたんだから。
他人と慣れ合うつもりは全くなかった僕は執拗に絡んでくる虎徹さんを鬱陶しくさえ思っていた。
そんな僕に彼は根気良く話しかけてくれていた。
心の底では悩んだり落ち込んだりしていたのか・・・

僕は急に申し訳ない気持ちになって歩く足を止めた。

「どうした、バニー?」
「・・・あの時は、すみませんでした・・・。」
「なんだよ、急に?」
「さっき、貴方が傷ついたって・・・僕、あの時はそんな事考えられなかったから・・・」

虎徹さんの顔を見ていられなくて僕は俯いた。
こつこつと僕に近付く虎徹さんの足音。
目の前で止まると僕の頭をくしゃっと撫でた。

「バニーちゃんはまじめだな〜。ほんの冗談で言ったのに・・・。」
「・・・傷ついたと言うのが冗談?」
「いや、それはほんと。でも、気にすんな。」

ポンポンと軽く叩いて虎徹さんは歩き出した。

・・・ほんと、敵わないな・・この人には・・・

僕は虎徹さんの背中を見て微笑むと虎徹さんの後を着いて行った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ