BL小説(TIGER&BUNNY編1)
□【牛折】ハッカ キャンディー
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遠くでチャイムが聞こえてきて俺は目を開けた。
どうやらソファで寝ていたらしい。
重い身体を起こし、頭を掻きながら玄関に向かう。
ドアを開けるとバーナビーが立っていた。
「は?バーナビー?」
「夜分遅くにすみません、バイソンさん。」
軽く頭を下げて挨拶をされて俺は慌てて頭を下げた。
「入っても?」
「あっ、あぁ。いいぞ。」
身体を横向きにしてバーナビーを中に促す。
お邪魔しますとご丁寧に断ってから中に入っていった。
「なんだ?」
訳が分からないまま俺はドアを閉めてバーナビーの後をついて行った。
リビングに入り、バーナビーが立ちつくしているのをソファに促して俺はキッチンに向かう。
コーヒーをドリップしてカップに注ぐ。
リビングに戻り、バーナビーの前にカップを渡すとありがとうございます。とまた律儀にお礼を言われた。
バーナビーの前に座る。
バーナビーは両手でカップを握ってゆらゆら揺れているカップの中のコーヒーを見つめていた。
俺ん宅にくるって事は・・・イワンの事だよな・・・
虎徹と飲んでいる時に言われたのを思い出して1人納得する。
「・・・バイソンさん。」
「ん?なんだ?」
「バイソンさんは虎徹さんより不器用な方だと思います。」
「・・・は?」
「僕としてはとても意外でした。お料理やお裁縫も器用ですし、本当はすごく器用な人なんじゃかいかと・・・」
「は、はぁ・・・」
イワンの事じゃないのか?
「でも違った。とても不器用で、でもとても優しい人なんですね。」
ん?誉められたのか?
バーナビーが俺を誉めるとかねぇから、なんか照れるな。
「あ、おぉ。ありがと・・・」
「しかし・・・」
バーナビーはコーヒーを一口飲むとしっかり俺の方を見た。
少し怒っているような・・・?
「それで好きな相手を不安にさせるのはどうかと思うんです。」
とやけにはっきりとした口調で言った。
・・・やっぱイワンの事か・・・
「・・・先輩はとても芯の強い方です。」
そうだよな。イワンてヤツは普段あんなに弱々しいのに、ちゃんと自分ってものを持ってる。
「どこまでも貴方を信じているし、貴方も先輩を裏切らないと言う事は分かっています。」
あのアメジストの瞳は人を疑う事を知らねぇ。
「・・・先輩は貴方から"言葉"が欲しいと泣いているんです、バイソンさん。」
んな事ぁ分かってる!
言われなくっても・・・!!
俺は顏を歪ませた。
バーナビーの言う事は俺が嫌ってほど分かってる事だ。
「・・・わりぃな、バーナビー・・・。お前にも心配掛けたみたいで。」
なるべく静かに立ち上がると玄関先へと歩いていった。
「わざわざ来てくれたのにわりぃが今日は帰ってくんねぇか?」
「・・・バイソ・・」
「頼む!」
バーナビーの言葉を遮って声を荒げてしまった。
「・・・・・・」
「・・・・・・・すまん。」
「いえ。・・・では・・・」
コーヒーのカップをテーブルに置くとバーナビーは静かに立ち上がって玄関から部屋を出た。
出る間際にお邪魔しました。と言って・・・
玄関のドアを閉めてその場で座りこむ。
「・・・なんでバーナビーんとこで泣くんだ・・・」
頭を膝の間に入れこむ。
「泣くなら俺んとこで泣けって・・・」
自分の不甲斐なさに泣きそうになった。