BL小説(TIGER&BUNNY編2)

□☆【虎兎】やっぱり本物がいいってこと
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あのDVDを見て数日。
バニーの様子を観察した。

別に何かある訳じゃねぇけど、あのDVDでそっくりバニーちゃんが語った一言が気になった。

『僕はプライベートでは男も女もOKなんで・・・』

あのそっくりバニーちゃんが言った言葉は俺の心に刺さった。
もしかしたらバニーも女を抱きたいと思ってるかもしれない。
限りなく少ない(と思いたい)可能性。
バニーだって男。
女を抱きたいと思ってると思ったら不安で仕方がねぇ。
もしかしたら別れる覚悟がいるかも?

「虎徹さん?どうしたんです?」

隣のデスクから俺に声を掛けてきた。

「ん?」
「ん?じゃなくて、ボーッとし過ぎですよ。また分からない所でもあるんですか?」
「いや、大丈夫だ。」

俺はこれ以上話しかけるなと言うみたいに液晶に向かってポチポチと打つ。
隣からまだ何か言いたげな雰囲気のバニーだったが小さくため息をついて前を向いた。



定時に仕事を終えた俺は意を決してバニーに声をかけた。
最初驚いた顔したバニーだったがニコリと笑って俺の誘いに乗ってくれた。

ちょうどスポンサーから貰った焼酎があるからうちに来いとバニーが言うので俺たちはバニーん宅に向かった。

「これ、珍しいんですってね?」

飯もそこそこに済ませてバニーは一本の瓶を俺に見せる。

「うぉ?!これ"森伊蔵"じゃねぇか?!」

思わずその瓶を持ってまじまじと見た。
芋焼酎の中で生産数が少ない希少な酒。
電話抽選でしか手に入らない。
俺の兄貴んとこでも中々お目にかかれない代物だ。

「なんでこんなモンをスポンサーが?」
「実は最近、"僕焼酎に興味がありまして"って話したら貰えるようになったんです。」

そうすれば虎徹さんと一緒に飲めるでしょ?とちょっと照れたようにバニーが言う。

・・・くそ・・・やっぱこいつ手放したくねぇなぁ・・・

泣きそうになるのを堪えて俺はバニーの頭を撫でた。
バニーはどこで買ったのか陶器のグラスに酒を注いで俺に渡して、自分も少しだけ入れた。


飲んでしばらくしたらバニーが俺の寄りかかってきた。
俺の真似してロックで飲むから酔っちまった。
目がトロンとして顔も赤く染まってる。
俺はバニーの肩を抱いてちびりちびりと飲んだ。

・・・こいつの傍にずっといて俺だけ見てくれたらいいのに・・・

「・・・こてつさん?」
「ん〜?」
「・・・きょぅ、へんですよ?」
「・・・ん〜・・・」
「きょうだけじゃない・・・ここ数日へんです・・・」

ちょっとだけ舌が回らないバニーが俺の目を見つめる。

・・・やっぱ聞かなきゃな・・・

「・・・あのさ、バニー?」
「はい?」
「バニーはさ・・・その、なんだ・・・女、抱きたい?」
「・・・・・・は?」
「だからさ、」
「ちょっ、ちょっと待ってください!!」

がばっと起き上がって正面から俺を見た。

「どうしてそうなるんですか?!」

今ので酔いが醒めたのか眉毛を吊り上げて俺の肩を掴む。

「なんなんですか?!もう僕と一緒にいたくないって事ですか??」
「違うっ、そうじゃねぇっ・・・!」
「じゃあ、なんで・・・っっ?」

掴んでいた手の力が抜け、俯く。
ポタポタと落ちる涙。

「・・・ずっと、一緒にいるって・・・ずっと傍にいるって・・・言ったじゃ、ないですか・・・」

涙声でそう言われて俺は言葉を失くした。

ずっと俺はお前といたいよ・・・俺の傍にいて欲しいよ・・・でも、もしお前が女を抱きたいって思ってるなら・・・

「・・・なぜですか・・・?・・・やっぱり男の僕では付き合えませんか・・・?」
「ちげぇよぅ〜ばにぃ・・・」
「もしかして・・・好きな女性が出来たんですか・・・?だから、そうやって・・・」
「それはちげぇよ!俺はもうお前しかいらねぇ!!」
「・・・だったら・・・」
「・・・・・俺さ、不安になっちまったんだ・・・。お前は女を抱いた事がない・・・だからもしかしたらほんとは女を抱きたいって思ってんじゃねぇかって・・・」

そこまで言って俺は口を閉じた。
この先の話はしたくない。

"もしそう思ってるなら別れた方がいいかもしれねぇ"

と。
するとバニーは口を開けたまま驚いていた。
そして顔を上げて俺を見ながら微笑った。

「・・・何を言い出すかと思えば・・・」

ゆっくりと俺の頬に手を添える。

「貴方、馬鹿ですか?」
「だっ?!馬鹿ってなんだ!!」
「馬鹿だから馬鹿だって言ったんです。」

クスリと笑って軽くキスをされた。
そのまま立ち上がって寝室に消える。

「・・・なんだよ馬鹿って・・・」

残された部屋で1人ごちた。
少ししてバニーが何か手に持って帰ってくる。

「もしかして、これを見たんです?」

俺の隣に座るとパッケージを見えるようにかざした。
そこには数日前、ファイヤーエンブレムが貸してくれた例のDVD。

「ぁ、え、なっ、ちょっ、それ・・・っ??」
「やっぱり見たんですね・・・」

呆れるようにため息をつくバニー。
俺は訳が分かんなくて頭ん中真っ白になった。

え?ちょ?どゆこと?
なんでバニーが例のDVD持ってんの??

「おおかた僕に似た人物が女性も男性も大丈夫って言ったから気になったんでしょ?」
「だっ?!」
「・・・やっぱり・・・だから馬鹿だと言うんですよ・・・」
「おま、なんで・・・?」
「あ、これですか?ファイヤーエンブレムから頂きました。」
「はぁ??」
「僕たちの事がバレてるかもしれないと言って・・・でもこれはあまり問題ではないですね。」

なんともない顔をしてバニーはDVDを床に置いてしまった。

「・・・え、問題ねぇ・・・て・・・?」
「えぇ。だって僕と似ている人・・・身体が華奢だし、虎徹さんに似いてる人だって貴方に比べたら無駄な肉が付いてますし・・・」
「ちょっ、ちょっと待て!」
「はい?」

バニーがアレコレ言いだしたから俺は慌てて止めた。

なんでそんな詳しいの?え?えぇ??

「・・・バニー?」
「はい?」
「・・・お前、見た、の?」
「はい!」

・・・そうだよな〜・・・ここにDVDがあるって事は見たって事だよな?
つーか、こいつ・・・すげぇ冷静に分析してやがる!
俺なんかあのDVDで抜いたってーのに・・・
俺はなんだかいたたまれなくなった。
あんな偽モン見て不安になっちまうなんて・・・

・・・情けねぇ・・・

「虎徹さん・・・?」

バニーが俺の顔を覗き見る。
なんの疑いもない綺麗な目で。

「あ〜・・・俺って情けないな・・・」
「・・・虎徹さん・・・」
「ほんと馬鹿だ俺・・・」
「・・・それじゃあ、そんな馬鹿が好きな僕はもっと馬鹿ですね・・・」

ニコッと笑って軽くキス。

そんなバニーを俺は疑っちまうなんて正真正銘の馬鹿だ。

「バニィ・・・」

情けない声でバニーを呼んでそのまま抱きしめた。


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