BL小説(TIGER&BUNNY編2)

□☆【虎兎】半年だけの恋人
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いつからこんな感情が芽生えてしまったのか?

あの人との出会いは最悪。
古くてお節介なロートルヒーロー・ワイルドタイガー。

そんなあの人に僕はいつの間にか恋をした。
あの人の仕草、表情…そのどれもが僕をドキドキさせた。

この気持ちをあの人に伝える気はない。
男同士で非生産的。
そもそもあの人は大事な奥さんがいて娘さんもいる。
男から想いを寄せられていると分かったら気持ち悪いと思うに違いない。
あの人は優しいから態度には出さないだろうけど…

……だけど……


あの人と家で飲む酒はとてもリラックス出来て、つい想いを伝えたくなる。
それをどうにか抑えるのに必死なのにあの人は僕によく触れた。
だから僕は少しだけ…お酒の力を借りて言ってみたんだ。

『半年だけお試しで付き合いましょう』と…

反応は思った通り。
酷く驚いていた。
だから僕はもっともらしく、少しだけ嘘を混ぜて説得した。

すると虎徹さんは黙って頷いてくれた。
それからの僕は浮かれていたのかもしれない。
2人っきりになれば、デートがしたいとか、虎徹さんの家に行きたいとか、僕の家に泊まって欲しいとか…
”恋人”らしい事がしたくて色々我儘を言った。
その度に虎徹さんは笑って許してくれる。
嬉しい反面……切ない。




お試しで付き合ってしばらくした時、僕は虎徹さんにキスをされた。
息苦しくて、でも頭の中がふわふわで気持ち良くて…
何度も何度も角度を変えられて激しく熱いキス。
僕を抱きしめてる腕も熱い。
まるで僕を求めるような…そんなキス…

…その後は…我に返ったように普通に話をしていた…


それからの僕は虎徹さんと話す度に視線をその唇に奪われた。
どうしても虎徹さんの唇を見てしまう。

これでは単なる変態じゃないか?!

気が付いては視線を逸らせていたけど…最近なんだか虎徹さんがよそよそしい。
僕と目が合うと慌てて逸らす。

自分からキスを仕掛けておいてそれはないんじゃないか?
だったらどうして僕にキスをしたんだろう?

視線を逸らされるのは正直苦しい。
僕のワガママで付き合わせているのだから、そのくらいは我慢しなければ…
だから僕はその事には気づかないフリをしていたけれど…


…もう限界かもしれない…

後3ヶ月残っていたけれど、そろそろ虎徹さんを解放してあげなくては…

そう思って、話がしたいと切り出した。



虎徹さんをこの僕の我儘から解放するには…
"恋人"として別れる…ただせめて"相棒"として傍にいさせてほしい…と話さなければならない。
だけど、その前に…ずっと気になっていた事がある。

あのキスの時に言っていた言葉…

『こういう事は本当に好きなヤツとする物だ』

あれはいったいどういう意味だったんだろう?

…どうしよう…緊張してきた…
たわいもない話をしつつ本題を出す隙を伺う。

…あれ?虎徹さん、ボーッとしてる…?

虎徹さんを呼ぶと不意に虎徹さんが僕の頬に触れた。

顔が熱い…そんな優しい目で見ないで…

動けないでいる僕に虎徹さんは勢い良くその手を離した。

…離れていく手が寂しい…

慌てながら虎徹さんが本題を切り出してきた。
一瞬高鳴る鼓動。
心の中で深呼吸をしてから僕は気になっていた事を口にした。

すると虎徹さんはさっきよりもっと慌てて口籠った。
そして、

「つ、つまりな…俺とお前は今…試しで付き合ってるけど…キスとかその先の事は、ほんとに好きになったヤツとするもんだよな〜って…」


……………………………………
…………………………え?それってつまり……………………?


「だから…」

そこで虎徹さんは完全に口を閉じてしまった。

というか、え?
それって、虎徹さんも僕の事好きだと言うこと??

虎徹さんの言葉はそういう意味を示している。
そう思ったらなんだか緊張が解れて笑ってしまった。

なんだ…僕だけが虎徹さんを好きだと思っていたのに…両想いだったのか…
でも、虎徹さんはその事を自覚していないみたいだ…
そうでなければこんな………全く………なんという壊し屋だ!

その事を指摘すると虎徹さんは盛大に驚いていた。

なんという事だ!
なんて可愛らしいんだ!
真っ赤になって慌てている虎徹さんを見ると愛おしくなってくる。

あ〜…この人に触れたい…
その唇にキスしたい…

僕はゆっくりと虎徹さんに近づいて両頬に手を添える。

「バッ、バニィ?!」

「…黙って…」

ニコリと微笑んで僕は唇を重ねた。
この感触を味わいたかった…
あの時キスをされてからこの人に、この唇に触れたいと思っていた…
経験がない僕は虎徹さんに唇を押し当てるだけで精一杯だけれど…それでもこの前されたように何度も角度を変えて唇を押しつけた。

「…んっ…」

虎徹さんが腰と首裏に手を回してより深い物へと変えた。
口内で動き回る舌。
僕の舌を絡めとると味わうように吸い上げる。

…苦しい…でもこのままずっとしていたい…

頭の中が麻痺していく。
気持ち良すぎてどうにかなってしまう。

「…んんっ…んふっ…」

少し口から離れると酸素を吸い込む。
目の前に琥珀色の瞳が僕を捉えた。
背中にぞくりと電流が走った。

「…バニー…」

優しいのに鋭い瞳。
低く甘い声で呼ばれて僕の下半身が反応した。
咄嗟に身体を離そうとしたが腰に触れている手が許してくれない。

「あ、ちょっと…離して、くださぃ…」

こんなはしたない僕を知られたくない。

「…だ〜め」

勃起してしまったものがグリグリと僕のものに当たる。
それは言われなくても分かる。

「…あんまり気持ちイイから勃っちまった…」

あぁ…貴方も感じてくれたんですか…?

目を細めて笑う虎徹さんにため息が漏れる。
両頬に添えた手を虎徹さんの後頭部にゆっくり這わせた。
髪の中に指を差し入れる。

「…虎徹、さん…」

「好きだ…バニー…」

嬉しい…僕も貴方が…好き…大好きです…

言葉に出来なくて僕はまた虎徹さんに唇を合わせた。


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