BL小説(TIGER&BUNNY編2)

□【虎兎】時を超えてもきっと君を…
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僕は覚えている。

前世の記憶。

僕はシュテルンビルドという都市でバディヒーローとして活躍していた。
ワイルドタイガーこと、鏑木・T・虎徹。
僕のもっとも信頼するバディで僕がもっとも愛する人。

彼が残した最後の言葉…

『ばにぃ…おれ、生まれ変わっても…ぜってぇお前、見つける、から…』

昏睡状態だった彼が一度目を覚ました時に言ってくれた言葉。
ドクターを呼びに行って帰ってきた時にはもう…

まさかあの言葉が彼の最後の言葉になるなんて…

でも彼はあんな状態でも僕に言ってくれた。
お前を見つけると…


「…貴方はいったいどこにいるんですか?」



今日、僕は高校生になった。
入学式の今日。
僕は神に感謝した。

とうとう出会えた…彼に…

出会い方は最悪だったけれど、それでも僕の愛する彼に間違いはなかった。



それなのに…

『だーーっ!!だからなんでお前に"虎徹さん"とか呼ばれなきゃなんないの??俺お前と会ったの今朝だけだよ??』

彼は覚えていなかった。
僕の事も…自分がワイルドタイガーだったと言う事も。

彼の言葉が心に突き刺さる。


その後の事はあまり覚えていない。
彼から離れて屋上を後にしてそれからの事は…








「ねぇ虎徹さん?」

「ん〜?」

彼の腕に抱かれながら僕は特徴的な彼の髭に触れる。

「生まれ変わりって信じます?」

「ど〜したの俺のバニーちゃんは〜?えらくロマンチストじゃねぇの?」

「茶化さないで下さいよ」

彼の髭をひっぱると彼はイテテとその特徴的な髭を摩る。

「で〜?どうしてそんな事言いだしたの?」

「いえ。今読んでいる小説が生まれ変わりを題材にしたお話なんです」

「ふ〜ん」

「あまり興味ない感じですか?」

「ん〜…興味ない訳じゃねぇけど…俺は今を一生懸命お前と生きたいなって思ってっからさ」

僕の手に絡める様に繋いでそのまま口づけを1つ。

「な?俺、今イイこと言ったろ?」

「…それがなけりればカッコ良かったんですけどね?」

クスリと笑って僕は彼にキスをした。








いくつもの思い出が夢という形で現れる。
彼との思い出が…

そう言えば彼は生まれ変わりだとかに興味がなかったな…

人生は一度きり…一度きりだからこそ精一杯生きるのだと…彼は言った。
どんなに辛い人生でも悔いを残さず今を生きる。

彼らしいと言えば彼らしい。



学級委員の仕事を終えて僕は日誌を先生に渡す為職員室を訪れた。
そこには一緒に赴任してきた雨宮先生と楽しく談笑している彼がいた。

雨宮先生は虎徹さんの奥さんに似ている。
前世で虎徹さんの部屋に行った時に写真で見た。
長くさらりとした黒髪で…優しそうで綺麗な女性。
前世では間近で2人を見る事がなかったけれど…正直、キツイ。

「…鏑木先生」

僕の呼びかけに気づいた彼が振り向き笑顔でこちらに向かってくる。

「おう、バニーちゃん!お疲れ〜!」

「……はい、これ」

溜息をつきながら僕は日誌を差し出した。

「サンキュー、バニーちゃん!」

あの頃と変わらない笑顔でそのアダ名を口にする。

「…何度言ったら分かるんですか?僕の名前はバニーじゃない、バーナビーです」

「わ〜ってるよ〜」

そんな怒んなって〜と僕の頭をガシガシと撫でる。

生まれ変わっても変わらないな…

内心微笑んだ僕は頭を撫でる彼の手を振り払う。

「…それでは失礼します、鏑木先生」

一礼して踵を返し職員室を後にした。




いつの頃からか彼は僕の事を”バーナビー”から”バニー”と呼び方を変えた。
入学して間もなく彼から"バニー"と呼ばれた時は驚いた。
あの屋上での出来事で彼は覚えていない事に落胆していた僕にとって、彼から"バニー"と呼ばれた事は驚いたと同時に歓喜に震えたんだ。


彼は思い出したんだと。


だけど…彼は僕を覚えていなかった。
彼曰く、

『バーナビーって呼びづらいなって思ってさ。』

そう言って彼はいつものように笑っていた。


「…彼女が傍にいるんじゃ僕に勝ち目はないな…」

目を伏せて自嘲気味に呟いた。


今世は諦めよう。
彼女がいるんじゃ僕の方を見てくれる訳がない。
だから距離を置こう。

そう思っているのに…

「バニー!」

校門を出たとこで声を掛けられた。

…全く貴方はいつの時代も空気を読まないな


呆れた僕は聞こえないふりをしてそのまま校門を出た。

「ちょっと待てってバニー!!」

鞄を持つ手を掴まれ、咄嗟に振りかえる。
息を切らして必死な彼の顔。
思わず胸が跳ねあがった。

「…なんですか鏑木先生?もう用事は済みましたよね?」

なるべく冷静な顔をして問いかける。
すると、

「お前さ〜明日の日曜って時間ある?」

「は?」

「実はさ〜実家に預けてる娘がいるんだけど…」

……娘?

「そいつ今年中3で来年受験なんだけどさ〜その子の家庭教師してくんない?」

「…はぁ?!何故僕が?貴女が教えてあげればいいじゃないですか!!」

「いや、それがさ〜…楓のやつ、あ、うちの娘な?楓のやつが俺からは教わりたくねぇって言って相手にしてくんないんだよ」

ひでぇだろ?なんて眉毛の下げて困った顔をする。
懐かしくて思わず頬が緩む。

「…それはアルバイトとしてですか?」

「そっ!ぶっちゃけそんなに出せねぇけどバニーちゃんをバイトで雇いたい!…どう?」

…このくらいなら関わってもいいかな?

僕は首を縦に頷いていた。





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