「おお振り」×「ダイヤのA」

□再会!その17
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ダメだったか。
御幸は静かに目を閉じながら、審判の試合終了のコールを聞いた。

プロ野球のシーズンは大詰めにさしかかっていた。
御幸が所属するチームは、リーグ1位でCS(クライマックスシリーズ)に臨んだ。
だが2位のチームにあと1つ及ばず、敗れ去ったのだ。
これで御幸の今シーズンは、終了となる。

それにしても、こいつにやられるとはな。
御幸は相手チームのベンチを見た。
見慣れた笑顔、そして聞き慣れた声が「だーはっはっ」と高笑いしている。
そう、この試合に勝ってリーグ優勝を決めたのは、沢村のチームだった。

それにしても。
御幸はノロノロと帰り支度をしながら、沢村を盗み見た。
あの日、阿部と三橋の計略に乗せられるかたちで、沢村と一夜を過ごした。
とは言っても、軽くキスをして、寄り添って眠っただけだ。
だがそこからの沢村は絶好調。
白星を重ねて、チームの優勝に貢献したのだ。

もしも開幕から一軍にいて、このペースで勝っていたら、間違いなく最多勝だ。
沢村のチームの首脳陣は、なぜ沢村を開幕一軍にしなかったのかと、マスコミやファンに叩かれる始末だった。
そのニュースを見るたびに、御幸はいたたまれないような気分になる。
沢村が調子を上げたきっかけは、間違いなく御幸だからだ。

俺もまだ日本シリーズには行ってないのに。
御幸はため息をつきながら、引き上げていく沢村の後ろ姿を睨みつけた。
まったく複雑な気分だった。
沢村が成長してくれたのは、もちろん嬉しい。
だがあっという間に追い越されたような敗北感もある。
何よりもこのオフは2人の関係を進めようと気合いを入れていたが、沢村はまだオフに入れない。
お預けをくらったような気もする。

まぁいいか。オフは長いし。
御幸はため息をつくと、スタンドを見た。
そこでは見知った2人組が、御幸に手を振っていた。
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