「おお振り」×「ダイヤのA」

□再会!その5
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「・・・ったく、何だってんだ!」
周囲のあまりの扱いに、沢村は文句を言った。

プロ志望届の受付が始まったが、沢村はまだ提出していなかった。
いくつもの球団が挨拶に来た降谷は、受付開始直後に出した。
春市や他の何名かの部員も、ダメ元なんて言いながら出している。
それなのに、沢村だけがまだ出していない。
理由は進路について、迷い始めていたからだ。
希望する球団からの指名がかからない可能性が高いから、大学も視野に入れ始めたのだ。

「本当によく考えたのか?」
こう言ったのは、監督である片岡だった。
「悪いけど、君は大学って感じじゃないと思う。」
これは副部長の高島。
「壊滅的な成績のくせに、進学?」
これは3年間、沢村を赤点から救い続けた金丸だ。

その他にも「大学に失礼」とか「世の大学生にあやまれ」なんていうのもあった。
賛同者がいないだけではなく、とにかく貶す意見ばかりが出てくる。
これはある意味、沢村の自業自得ではある。
何しろ授業中は寝てばかり、テストは金丸たちの手を借りて赤点スレスレ。
とにかく勉強のイメージと対極にあるのだから。

だが文句を言いながらも、沢村は迷っていた。
沢村の望みは、プロでまた御幸に投げることなのだ。
このままプロに行っても、それはできそうもない。
かといって、4年後に先送りして、できるという保証もない。
4年後のか細い可能性にかけるより、いっそ諦めた方がいいとわかっている。
それでも割り切れないのが、微妙な男心なのだ。

そんな時、沢村の携帯電話が鳴り、メールを受信した。
差出人は捕手としてもっとも敬愛する、そして沢村に進路を迷わせる先輩だ。
彼が卒業した後、メールを寄越したのは数えるほどしかない。
いったい何事かと、沢村はメールを開いた。

大学に行くって?バカなこと考えるなよ。
御幸のメールは、短く素っ気なかった。
ドキドキしながら開けたのに、これだけ?
沢村は肩透かしを食らった気分だった。
念のために、メールを下の方までスクロールしてみたが、特に何も隠れていない。

あの人はオレの球を捕りたいと思ってないのかな。
沢村はそう考えて、少しだけ悲しくなる。
そして送られてきたメールの意図を考えるが、いくら悩んでも答えは出なかった。

【続く】
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