「黒子のバスケ」×「図書館戦争」

□第2話「地下書庫にて」
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「うわぁ。コンビニの棚が書架に見える。。。」
郁はクラクラする額を押さえながら、お菓子のコーナーを見た。
だがチラリと一瞥しただけで、いつもは足を止める場所を通り過ぎたのだった。

このところ、堂上班は地下書庫のリクエスト業務が続いている。
これは郁にとって、かなり苦手な分野だった。
記憶力が人より乏しい上に、錬成期間中もどうせ自分は防衛部だからと座学はほぼほぼ寝ていたのだ。
そこへいきなり頭脳が必要なところへ放り込まれて、こなせるわけがない。

堂上も小牧もあきれ顔だし、手塚はイライラしている。
だが郁としては、どうしようもないのだ。
いきなり上達するものでもないし、気合いでどうにかなる問題でもない。
途方に暮れていたところに現れたのが、黒子だった。

「どうも。黒子テツヤと言います。」
いきなり背後から声をかけられたときには、飛び上がるほど驚いた。
郁を怒鳴り散らしていた手塚と一緒に「うわぁ!」と叫んでしまった。
だが黒子はそんな郁たちにはおかまいなしに「笠原一士のサポートにつきます」と告げたのだった。

「笠原一士の好きなものは何ですか?」
手塚が離れていくなり、黒子はそう聞いてきた。
郁は思わず「アジフライです。あとアイスクリームとかコンビニのお菓子」と答えた。
あまりにも唐突だったので、考える暇もなく本当のことを言ってしまったのだ。
だが黒子は「わかりました。行きましょう」と言い出した。
郁は「何なの、この人?」と思ったが、すぐに理由がわかった。

「まずはリクエスト伝票を取って来るのは、笠原一士にお願いします。一度に数枚ずつお願いします。」
黒子はそう告げると、郁は「え?」と戸惑う。
だがすぐに「始まってますよ!」と告げられ、郁は走り出した。
そして5枚のリクエスト伝票を取って戻ったところで、黒子式の指導が始まった。

「数字の部分だけは、絶対に聞き逃さないで下さい。」
黒子はそう前置きすると、1枚の伝票を渡してくれる。
そして「910番台、日本文学はハーゲンダッツ。913小説、クッキー&クリーム」などと言い出した。
郁としては「えええ〜?」と叫んだものの、もう1度繰り返されたので数字の部分は聞き取れた。
そして黒子が指さした方向へと、走り出した。

こんな感じで、いちいちアイスクリーム関連の単語を添えて指示された。
もちろんハーゲンダッツだけには留まらない。
サーティーワンの「ホッピングシャワー」だの「ストロベリーチーズケーキ」だの「ロッキーロード」だの。
コンビニで売っている「ガリガリ君」から「チョコもなかジャンボ」「エクセルスーパーカップ」。
アイス好きなら誰でも連想できるものばかり、しかもすべて関連付けされている。
言われたアイスを連想し、食べたいなと思いながら走る。
そうこうしているうちに、何となくだがジャンルの場所がわかるようになってきた。

そして黒子が付いてくれるようになって、数日が過ぎた。
すると郁にも黒子という風変わりな図書館員のことが、かなりわかってきた。
郁に指示を出しているばかりではなく、黒子は自分でもリクエスト図書を捜している。
おそらくめったに出ないレアなものは黒子が捜し、初心者の郁にはわかりやすいものを回しているのだろう。
さらにそうしながら、堂上たちの動きもちゃんと見ていた。
手塚が手にしたリクエスト伝票を見て「こっちのリクエストと交換しましょう」などと声をかけたりする。
近い場所にある図書は、同じ人がまとめて取りに行った方が効率がいいという判断だろう。

あたしも頑張らなきゃ。
郁は黒子の仕事振りを間近で見ながら、そう思った。
実際に課業後には、柴崎に頼んで特訓もしてもらっている。
間違えるとチョコを食べさせられるので、顔にはニキビがいくつもできてしまった。
それでもいい刺激を受けて、モチベーションもスキルも上がっているのがわかる。

「アイス食べたい。でも我慢!」
課業後、コンビニに買い物に来た郁は、アイスクリームのケースの前を通り過ぎた。
毎日黒子にアイスクリームの名前を連呼されるので、もう食欲がおかしくなっている。
それでも黒子がサポートしてくれている間は、食べないことにした。
アイスクリームへの欲求が高まった方が、よく覚えられそうな気がするのだ。
それに柴崎に毎日食べさせられるチョコで、カロリーは充分足りている。

早く心置きなくアイスを食べられるように、まだまだ頑張る!
郁はその決意のもと、お茶とスポーツドリンクを取ってレジに向かった。
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