「黒子のバスケ」×「図書館戦争」

□第6話「気晴らし」
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「かわいい〜♪」
それを見るなり、郁は声を上げながら駆け寄った。
尻尾を振りながら身を摺り寄せてきたそれは、黒子によく似た犬だった。

昼休み、食事もそこそこに郁は図書館の敷地内の中庭に向かった。
午前中、黒子に「気晴らし」に誘われたのだ。
1人で行くつもりだったが、いつの間にか堂上班プラス柴崎の大所帯だ。
何があるか知らないが、勝手に人数を増やしてもいいものなのか。
だが堂上が「俺も誘われた」と言っており、それならいいかと5人でやって来たのだ。

「笠原一士、こっちです。」
黒子は先に来ており、こちらに向かって手を振っていた。
利用者らしい若い女性と2人で並んでベンチに座っており、足元には白い生き物がいた。
郁が「かわいい〜♪」と声を上げながら駆け寄ると、尻尾を振りながらスリスリと甘えてくる。
それは白い子犬だった。
とはいえ生まれたばかりではなさそうで、大きくならないタイプなのだろう。
パッと見て犬種がわからないところを見ると、雑種のようなのだが。

「なんだか黒子二士に似てないか?」
ぼそりとそんなことを呟いたのは、手塚だった。
残りの4人はマジマジと郁が抱き上げた子犬を見る。
真っ先に「ブフ」と声を上げたのは、もちろん小牧である。
続いて柴崎と郁が「確かに似てる〜♪」と笑いだした。
堂上は笑いを堪えて微妙な表情になり、手塚も堂上に倣って同じ顔だ。

「黒子君の同僚のみなさん?」
「同じ部署ではないですが、まぁ同僚です。」
一緒にいた若い女性からの問いに、黒子はそう答えた。
敢えて特殊部隊などと口にしないのは、黒子なりの配慮だろう。
快活な雰囲気の女性は立ち上がると、堂上たちに向かって口を開いた。

「こんにちは。黒子君の高校の先輩で相田リコです。この子はテツヤ2号。」
堂上、小牧、柴崎は思い当たる節があった。
黒子のバスケ関係者はチェックされているのだ。
相田リコの名もあった。
誠凛高校バスケ部の監督を、高校時代から務めている。
大学卒業後は父親が経営するジムで働きながら、今もバスケ部監督は続けていた。

「2号は高校時代に黒子君が拾ってきた犬でね。そのまま高校で飼ってるの。」
「それにしても、ホントにそっくりですね。」
「でしょ。だから名前もすぐ決まったの。昔はもっと似てたかなぁ。」
「かわいいですねぇ。」

相田と郁は子犬を挟んで、すぐさま打ち解けた。
そして子犬も郁を気に入ったようで、身体中をなで回す郁にじゃれついている。
黒子が「2号、あまりじゃれたら笠原一士の制服が毛だらけになっちゃいます」と注意した。
すると子犬はおとなしくなり、それでも郁に向かって尻尾を振っていた。

「2号は元々人懐っこいんですが、特に笠原一士が気に入ったようですね。」
「本当に?やった!」
ここ最近両親の件でふさぎ込みがちだった郁の久々の笑顔に、堂上もホッと胸を撫で下ろした。
そして「なるほど。気晴らしか」と呟くと、小牧が黙って頷いた。

悪いヤツじゃない。
堂上は少しだけ黒子の評価を引き上げた。
あくまでも少しだけだ。
やはり図書隊内での動きは不可解であり、意図がわからない分不気味だった。
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