「おお振り」×「ダイヤのA」

□2年目の夏!その後「初戦突破」
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「勝った。。。」
三橋は試合終了のサイレンを聞きながら、マウンドに座り込んだ。
誰もが予想しなかった西浦の勝利に、球場はどよめいていた。

埼玉県大会、3回戦。
ここまでは順調に勝ち上がった西浦の相手は、千朶高校。
埼玉では優勝候補ナンバーワンのARC学園高校に次ぐ強豪だ。
もしもARCを破るとしたら、おそらくここだと言われる。
つまり前評判では、埼玉ナンバー2の高校だった。

西浦は1年の秋、この千朶高校に破れている。
県立高校にしてはよくやったなどと評価されたが、負けは負けだ。
組み合わせが発表されてからずっと、三橋たちは今度こそ勝とうと燃えていた。
最初からこの試合に備え、データ解析してしっかり準備をしてきた。

試合前半は投手戦だった。
6回まで0対0、お互いヒットは出るものの点には結びつかない。
つまりあと一押しができない、我慢比べのような展開だ。
均衡が破れたのは7回の裏、千朶がついに先取点を取った。
だが8回、西浦は同点に追いつき、9回で逆転。
そして9回裏を守り切り、見事に雪辱を晴らしたのだった。

「やったな!」
試合後、すぐに阿部がマウンドに駆け寄って来てくれる。
三橋は「うん」と笑顔で答える。
そこで他の選手たちも集まって来て、もみ合いの大騒ぎになった。
なにしろ埼玉ナンバー2を倒したのだ。
まるで優勝したかのような、大騒ぎだった。

でも素直に喜べない。
一通り騒ぎがおさまると、三橋はそう思った。
今回、千朶高校に勝てた1つの要因は、青道から受け取ったデータにあった。
8回からリリーフに出た投手は1年生。
公式戦に出るのも初めてで、本来ならノーデータで対峙しなければならないはずだ。
もちろん千朶もそれを見越して、マウンドに送ったのだろう。

でも彼らは大会前に青道と練習試合をしており、1年生投手もそこで投げていた。
そしてそのデータは、西浦に渡っていたのである。
球速や球種などもバッチリ分析できていたし、1年生投手も初登板で本調子ではなかった。
それが功を奏し、何とか勝てたのだ。

「運も実力だ。割り切れ」
ベンチから引き上げる通路で、阿部が三橋にそう言った。
阿部は三橋の心のうちなど、お見通しらしい。
三橋は「わかって、る!」と声を張った。

そう、わかっている。
今の西浦は総合力ではやはり強豪の私立高校にはかなわない。
10試合やって、1回勝てるかどうか。
だからその1回をどうやって公式戦に持ってくるかが重要。
手段がどうこうとか、素直に喜べないとか言っている場合ではないのだ。

「青道は、すごい、ね!」
三橋は今さらのように、そんな感想を口にした。
東京ナンバーワンはと問われれば、必ず候補に挙がるであろう強豪校。
データも出回り、東京中の高校が倒してやるぞと分析する。
それでも勝ち進んでいる、名実ともに王者なのだ。

「だな。でも負けてられねーぞ?」
「うん。甲子園、で、会うんだ!」
三橋は沢村や三橋の笑顔を思い出しながら、元気よく宣言した。
データなどとは関係なく、常にベストのピッチングをする。
それがエースのしての務めであり、その先にチームの勝利があるのだ。

【続く】
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