「おお振り」×「ダイヤのA」

□2年目の夏!その後「それぞれの甲子園」
3ページ/3ページ

「あれ、レン?」
沢村は知った顔を見つけて、思わず足を止めた。
両手に料理の皿を持った三橋は「おめ、でとう!」と笑った。

甲子園での初戦、青道高校は危なげなく勝利した。
沢村は好投したし、打線もよく打った。
だが初勝利の余韻に酔うヒマはない。
ベンチ入りメンバーは次の対戦相手が決まる試合を観戦することになった。

「オレ、ちょっと飲み物買ってきます!」
「席を取っておくから、オレの分も頼む〜!」
御幸が沢村の荷物を受け取ると、ヒラヒラと手を振った。
沢村は財布だけ持って、球場内の自動販売機に向かった。

「あれ、レン?」
スポーツドリンクを2つ買って、戻ろうとしたところで沢村は足を止めた。
ここで会うには意外過ぎる人物を見かけたからだ。
その人物、三橋も沢村の顔を見るなり「あ!」と驚いていた。

「おめ、でとう!」
三橋は開口一番、そう言った。
どうやら試合を見ていてくれたらしい。
沢村は「おぉ!ありがとな!」と答える。
そして「みんないるから、会っていくか?」と誘った。
三橋は二カッと笑うと「行く!」と答えた。

「三橋、何持ってんの?」
青道高校が座っている一角に戻ると、御幸が目敏く声をかけてきた。
本来なら挨拶が先なのだろうが、それより気になることがあったからだ。
三橋は真面目な顔で「こーしえん、めーぶつ」と答えた。

それは甲子園3大名物グルメ。
焼きそばとカレーとジャンボ焼き鳥だ。
三橋は両手にそれぞれ、焼きそばとカレーの皿。
そして焼きそばの皿の上に焼き鳥の串が2本乗っていた。

「マジか。それお前1人で食うの?」
「それでよく太らないね!」
倉持と小湊が茶々を入れながらも、真ん中の席を開けた。
三橋はごくごく自然にそこに座り、3大グルメを食べ始めた。

「相変わらず、良く食うなぁ」
「それでよく太んねーな」
沢村と御幸は猛然と食べる三橋を見ながら、苦笑する。
そこへ息を切らしながら、阿部が走り込んできた。

「なんでここで食ってんだよ?」
「え、栄純、君と、会ったから」
「そろそろ時間だ。移動だぞ!」
「その前に、喉、かわいた」

阿部は「ハァァ?」と文句を言いながらも、お茶のペットボトルを渡した。
三橋は阿部の文句など物ともせずに、ゴクゴクとお茶を飲む。
突如始まった西浦バッテリーの掛け合い漫才に、青道ナインは笑った。
それにしても冷静に考えれば、よくこんな場所で会ったものだ。

「お前ら、観戦にきたの?」
御幸は阿部にそう聞いた。
阿部は「ちわっす」と頭を下げた後「遠征です」と答えた。

「遠征?」
「こっちで桃李、泰然、波里と合同練習っす。そのついでに観戦に」
「ついでかよ。ってか強いトコばっかじゃん!」

御幸は相変わらずの西浦の得体のしれなさに、驚いた。
桃李と泰然は兵庫、波里は愛媛の強豪校だ。
青道とも縁が深いし、その人脈は恐るべしと言える。

「じゃあ、頑張って下さい!」
「お、おーえん、してます!」
嵐のように現れた西浦バッテリーは、嵐のように去っていく。
御幸はそれを見ながら「慌ただしいな」と苦笑した。

「あいつらも進化をつづけてるんすね。」
沢村は遠ざかっていく2人を見ながら、そう言った。
甲子園に出ていない学校も、厳しい練習を積んでいるのだ。
こっちだって負けてなんかいられない。

御幸と沢村は並んで座り、スポーツドリンクを飲み始めた。
こちらはまだまだ夏の長丁場。
目標は全国制覇、勝つしかない。

【END】お付き合いいただき、ありがとうございました。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ