「おお振り」×「ダイヤのA」

□再会!その4
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阿部と三橋は、三橋邸の庭にいた。
最後の夏の大会を終えた2人は、今は受験モードに突入している。
放課後は一緒に予備校に通ったり、三橋の部屋で勉強したりする。
全ては同じ大学に進むためだ。

少し前まで、この場所には手作りの投球練習場があった。
だがそれも今は片づけてしまっている。
これは三橋が自分で決めたことだった。
投球練習できる状態にしておけば、絶対に投げたくなる。
だから投球練習場は、受験が終わるまで封印した。
受験が終わるまで、ボールは投げないつもりだった。

だが阿部は週に1回だけ、キャッチボールをしようと提案した。
毎日何十球も投げては確かに逆効果だが、週に1度5分程度なら、気分転換になると。
そしてそれは、その通りだった。
やはり野球ばかりしていた頃に比べれば、受験生はストレスが溜まる。
だが週1回、少しだけキャッチボールをするだけで、気が晴れるのだ。

「模試、どうだった?」
今日もその週1回のストレス解消をした後、阿部は三橋にそう聞いた。
三橋は「ちょっと、だけ、上がった」と答えた。
だがその口調は、どんよりと曇っている。
阿部が「見せて」と手を伸ばして来たので、三橋は結果が印刷された紙を渡した。

それは2週間ほど前に受けた、塾の模試の結果だった。
志望校も記入しており、現時点での合格の確率が数字で出る。
阿部と三橋は六大学のうち、日本最高峰のあの国立大学を除いた5校を書いた。
そして今日、その結果が返ってきたのだ。

「W大とK大は5パーセント。R大が8で、H大が9。M大は10パーセントか。」
「・・・とても、受か、ん、ない」
「今の時点ではな。」
「あと、半年、しか、ない、のに」
「1月前はどれもほぼゼロだったじゃん。進歩だよ。」

阿部はそう言って、励ましてくれる。
だけど三橋は、絶望的な気分だった。
確かにここ1ヶ月、必死で勉強して、少しくらいは成績が上がっているかもしれない。
だけどそんな微々たるもの、どうでもいいような気がするのだ。
いくら成績が伸びたって、志望校に合格しなければ意味がない。
そして今のところ、合格できる気がしなかった。

「この調子で頑張れ。よし、勉強するぞ。」
阿部はそう言って、玄関の方へと歩き出す。
三橋はその後ろ姿を追いかけながら、こっそりとため息をついた。
本当に受かれるのかわからないが、今はやるしかないのだ。
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