「おお振り」×「ダイヤのA」

□再会!その7
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「気分転換しようぜ!」
田島が元気よく三橋に差し出したのは、2枚の紙切れ。
それはプロ野球の公式戦のチケットだった。

三橋の兄貴分である田島悠一郎は、すでに進路を決めている。
野球が盛んな有名大学から誘いが来ているのだ。
もしも三橋が希望する大学に進めれば、対戦することになるかもしれない。
田島本人はプロ志望届を出すかどうか、かなり迷った。
だけど結局大学進学を選び、今はのんびりと卒業を待っている状態だ。

だから受験勉強に励む三橋などを見ていると、大変だと思う。
そして何より納得がいかなかったりもする。
三橋ほど努力する選手を、田島は知らない。
練習だって一生懸命だし、何よりもあのコントロールは努力の賜物なのだ。
そんな三橋にどこの大学も声をかけないなんて、おかしいと思うのだ。

そして最近の三橋の様子が気になっている。
三橋と阿部は大学でもバッテリーを組もうと決めて、頑張っている。
だが2人は普段の成績が違いすぎるのだ。
阿部が三橋に合わせるなら、かなりランクを下げなければならない。
逆に三橋が阿部に合わせるなら、かなり無理をする必要がある。
だから戦略として、まずは三橋の成績を上げられるだけ上げようということらしい。
だが最近、三橋は表情に余裕がなくなっているように見える。

西浦高校野球部は、とにかく効率にこだわった練習をしている。
青道高校みたいに、環境に恵まれていないのだから、どうしてもそうなるのだ。
狭い場所で、短い時間で、そうやって成果をあげるか。
田島は受験勉強だって同じではないかと思っている。
そして今の三橋は、ただガムシャラにやっているように見えるのだ。
そんな三橋のためにと、田島が思いついたのは「息抜き」だった。

「行こうぜ!」
「で、でも、オレ、勉強」
「1日くらい、大丈夫だって!それにさ」

田島がチケットのチーム名を指さす。
三橋は思わす「おおお、御幸、センパイ」と声を上げる。
そう、昨年の青道高校の捕手、御幸がいる球団なのだ。
田島が「行くよな」とダメ押しをすると、三橋はコクンと頷いた。
なんだかんだで、誘惑には逆らえないのが三橋なのだ。
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