「おお振り」×「ダイヤのA」

□2年目の夏!その3
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「どうかしたか?」
田島が心配そうに三橋の顔を覗き込んでくる。
三橋は驚き、我に返ると「なんでも、ない!」と叫んだ。

西浦高校野球部の面々は、コンビニの前にいた。
練習の後は学校に一番近いコンビニに寄って、家に帰り付くためのカロリーを身体に詰め込む。
それはもうほぼ部活の一環になっていた。
季節によって、選ぶメニューは変わる。
だがそれ以外は変わることない、彼らの日常だ。

この日、三橋は肉まんを選んだ。
予算はだいたい1日100円、それが高校生の限界だ。
そして兄貴分の田島のチョイスは、アイス入りのモナカ。
2人はそれぞれ半分に割って、交換する。
これが三橋と田島の最近のブームだった。

「今日の練習はちょっと軽めだったな。」
「でも、明日、え、遠征だ、から」
「だな。頑張ろうな!」

2人は顔を見合わせると、二カッと笑う。
そしてまずはアツアツの肉まんにかぶり付いた。
美味い。練習後の疲れた身体には特に。
三橋は一気に肉まんを食べてしまい、名残惜し気にため息をついた。

明日から遠征。
それは東京の青道高校との練習試合だった。
西浦も1年生が加わり、人数が倍になった。
そこでAチームが青道1軍、Bチームが青道2軍と試合をする。

世間的な評価なら、青道高校の方が断然上だ。
だが一方的な試合にはしたくない。
もっと言うなら、勝ちたいと思っている。
とにかく明日は精一杯やるだけだ。

だが三橋にはそれ以上に気になることがあった。
先日、沢村から閉じ込められたと助けを求める電話が来た。
慌てた三橋はすぐに阿部に連絡。
そして阿部が御幸に電話し、しばらくして沢村発見の知らせが来た。

沢村が無事なら、それで良い。
翌日には沢村本人が元気な声で電話をして来た。
だが気になるのは、それから先だ。
沢村を閉じ込めた犯人は、結局わからなかったらしい。
そしてその後、青道野球部副部長の高島から「この件は内密にしてほしい」と電話が来た。
夏の大会も間近だし、余計な騒ぎは避けたい事情は理解できる。
だから一応監督の百枝と顧問の志賀にだけ話し、他の部員たちには秘密にしていた。

でも大丈夫なのかな。
三橋はぼんやりとそう思った。
犯人がわからないってことは、沢村がまた何かされる可能性もあるのではないか。
だがいつの間にか考え込んでしまい、手が止まっていたらしい。
ふと気づくと、田島が心配そうに三橋の顔を覗き込んでいた。

「どうかしたか?」
「なんでも、ない!」
我に返った三橋は、元気よくモナカにかぶりついた。
本当に?と言わんばかりの表情の田島には申し訳ないが、事情は話せない。
それでもモナカのアイスが美味しくて、三橋は「ウヒ」と笑った。

とにかく明日、沢村に会える。
その時に少しは話せるだろう。
それに沢村には御幸がついているのだし、注意しているはずだ。
三橋は気を取り直すと、一気にアイスを食べ切った。
とにかく彼らとまた試合ができることが楽しみで仕方がなかった。
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