生きる5題+

□もっともっと強いイタミを
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「タッチダ〜ゥン」
勝利のデビルバットダイブを決めた直後、小早川セナは地面に横たわっていた。
審判のコールで、ハッと我に返る。
試合終了。巨深ポセイドンになんとか勝ったのだ。

それにしても今日はどうしたんだろう?
身体が全然思うように動かなかった。
デビルバットゴーストを駆使しても、筧をなかなか抜けなかった。
苦肉の策のハリケーンゴーストを使ったら、今度は水町に止められた。
最後のダイブも長身の巨深のラインの上を行けるはずだった。
なのに最後は小結のフォローでようやく抜けたのだ。

今も身体が重いし、頭痛がする。
おまけに、めまいと吐き気までこみ上げてきた。
それでも勝った喜びに顔を綻ばせ、何とかフラフラと身体を起こす。
でも立ちくらみが襲ってきて、その場にしゃがみ込んでしまった。

「セナ?」
「どっかケガしたのか?」
デビルバッツのメンバーたちがセナに駆け寄ってきた。
再度ヨロヨロと立ち上がったセナを後ろから支えたのは、心優しい巨漢の先輩だ。
栗田が「大丈夫?」と心配そうな表情で、セナを見下ろしている。

「す、すみません。肩を打ったみたいです。」
セナは力なく笑った。
最後のデビルバットダイブで肩を打ったのは嘘ではない。
肩からは鈍い痛みが伝わってくる。
でもそれ以上に身体が辛い。

「でも大丈夫です!次も頑張りましょう!」
不安な気持ちを押し隠して、セナは笑った。
自分が充分に動けなかったせいで、最後まで綱渡りの試合になってしまった。
それを身体のせいにしたくない。
それ以上に勝利に沸いているチームメイトたちを不安にしたくなかった。

セナは気付かなかった。
泥門の主将、ヒル魔がこちらを凝視していることを。
地獄の司令塔はかすかに顔をしかめながら、セナの動きを目で追っていた。
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