生きる5題+

□大空へ羽ばたく
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「セナは何かの病気なのか?」
ノックもなく部室に入ってきた十文字が、単刀直入にそう聞いてきた。
ヒル魔はノートパソコンを叩く手を止めて、十文字を見た。

神龍寺を破り、泥門の次の対戦相手は王城だ。
ヒル魔が1人部室で作戦を練っていたところに、十文字が来た。

来るべき時が来たかと思った。
次にセナの異変に気がつくのはこの男だろうと思っていたのだから。
そもそもアイシールド21の正体も、言われる前に気がついていた。
洞察力がするどい男なのだ。

セナではなくヒル魔に聞いてきたという点も、評価してやろうと思う。
十文字はちゃんと見抜いている。
セナ本人が隠したがっているということも、ヒル魔が真相を知っているということも。

セナは自分の身体のことを、クリスマスボウル後には打ち明けたいと考えていた。
だがそれ以前に気がついた部員には、真実を話すのも止むなしと思っている。
疑念を持たれたままでギクシャクするのは本意ではない。
最悪、試合で命取りになりかねない。
だからセナはヒル魔が必要と判断したら、独断で話してもいいと言ってくれていた。

「十文字。秘密、守れるか。」
ヒル魔の真剣な口調に十文字は頷いた。
いつもの「糞長男」ではなく「十文字」と呼ばれたことに、驚いているようだ。
だがそれだけ重要な秘密なのだと感じ取ってくれただろう。

ヒル魔は包み隠さず、十文字に真実を告げた。
十文字はセナが背負った運命を知り、驚きを隠せないようだった。
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