生きる5題+

□+いきてるきがするから
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「帝黒のクォーターバックって、女の子なんだ。。。」
セナは意外な事実に驚いていた。

泥門デビルバッツは関東大会を制覇し、クリスマスボウルへの出場を決めた。
だがもちろんそこで終わりではない。
最後にして最大の難関、帝黒アレキサンダーズ。
クリスマスボウルを第1回から去年まで制覇。
その偉業から「全ての始まりにして全ての頂点」と呼ばれる超強豪校だ。

セナはモン太、鈴音と共に偵察に来た。
部員数は200人超、1軍から6軍まであり、設備も充実している。
そのスケールの大きさにも、偵察に来たセナたちを少しも嫌がらないことにも驚かされる。
だが何より驚いたのは、1軍のQBが1年生の女子だったことだ。

女子にはアメフトはできない。
セナはそう思い込んでいた。
ひょっとしたら無意識のうちに、自分の病気を言い訳にしていたかもしれない。
力を出し切れないとしたら、それはこの身体のせいだと。
だが彼女−小泉花梨を前にして、そんなことは何の理由にもならないと思い知らされた。

もちろんそれは励みになる。
帝黒という強豪校で1軍を務める女子がいる。
女の子の身体でも活躍できるという事実は、頼もしいことなのだが。

「花梨さん、美人、だよね。」
セナは思わずため息をついてしまう。
小泉花梨はまぎれもなく美少女だ。
セナのように、性別が曖昧な存在ではない。
正真正銘の女子で、美人で、アメフトが上手いのだ。

彼女がもし、帝黒ではなく泥門高校にいたら。
ヒル魔は花梨に惹かれるのではないだろうか。
ひとたび心に生まれてしまった疑念は、どうしても消えない。

それ以来、セナは考え込んでいる。
練習の間は必死で、そんなことは忘れていられる。
だがそれ以外の時間には、どうしても花梨の顔が頭にチラついてしまうのだ。
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