「世界一初恋」×「図書館戦争」

□第9話「暴れクマvsクマ殺し」
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「あなたは先日の」
小牧はその利用者の男を見て、驚きの声を上げる。
そしてバディの堂上に「この前の抗争の時、毬江ちゃんを助けてくれた人」と教えた。

小牧は堂上と共に、館内を巡回していた。
そして文芸コーナーの書架の前で、険悪な雰囲気で向き合っている2人を見つけたのだ。
そのうちの1人は律だった。
そしてもう1人の男はよくわからないが、とにかく対照的だった。
小柄で整った顔立ちの律と、大柄でワイルドな雰囲気の男。
容姿で判断してはいけないと思うが、見ようによっては律が襲われそうに見える。

堂上も何か剣呑な雰囲気を感じ取ったらしい。
阿吽の呼吸で目配せをし、そっと2人に近づく。
だが小牧は律と相対した男の顔を間近に見て、驚いた。
彼は先日の抗争の時、毬江を助けてくれた男だった。
耳が不自由なために館内に取り残された毬江を、防護室に連れてきてくれたのだ。

「彼女を助けてくれて、本当にありがとうございました。」
「いえ。たいしたことではないので」
「律さんとはお知合いですか?」
「ああ、同じ会社でして。丸川書店の横澤と申します。」
「小牧です。」
「堂上です。」

なんとなく流れで自己紹介を済ませると、小牧と堂上は警戒を解いた。
同じ会社というなら、トラブルではないのだろう。
横澤と名乗った男は悪い人物ではなさそうだし、律の人柄は言わずもがなだ。
小牧は堂上と頷き合い、そのまま立ち去ろうとしたのだが。
横澤と律は、また険悪な雰囲気に戻り、話し始めた。

「お前、図書館では猫かぶってるのか?」
「何言ってるんですか。横澤さんが因縁つけるから、不審者だって疑われたんですよ!」
「俺のせいだってのか!?」
「ただでさえ迫力ある顔で、睨んで凄んだじゃないですか!」
「人相が悪いってのか!?」
「あんた、自分が『暴れグマ』って呼ばれてるの、知らないんですか!」

雰囲気は険悪でも、思いがけずコミカルなやり取り。
しかも暴れグマって!
それを聞いた堂上は、思わず眉間のシワを深くした。
なぜなら堂上は「熊殺し」いや今では「初代熊殺し」と呼ばれている男なのだ。

「律、さん、たち、面白、すぎ。。。」
小牧は警護中にも関わらず、腹を抱えて床に沈んだ。
そして腹筋の痛みに耐えながら、このネタは絶対に柴崎に教えようと思ったのだった。
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