「アイシールド21」×「図書館戦争」

□第2話「ファーストコンタクト」
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特殊部隊って、女の人もいるんだ。
セナはぼんやりとそんなことを考えた。
ごつい筋肉男たちの中で、その女性隊員はしっかりと目立っていた。

「関東図書隊、特殊部隊隊長、玄田竜助一監だ。」
「泥門デビルバッツ、主将の小早川瀬那です。」
セナは握手を交わしながら、周囲からの視線を痛いほど感じていた。
アイシールド21。良くも悪くも本名より浸透している通り名。
先にその評判を聞いてから実際のセナを見ると、大抵の人間は驚くのだ。
こんな小さな子供が、あのアイシールド21なのかと。
だからこんな視線には、もうすっかり慣れている。

「堂上篤一正です。訓練場までご案内します。」
今度は別の図書隊員が、そう声をかけてきた。
先程女性隊員になぜか拳骨を落としていた小柄な隊員だ。
小柄とは言ってもセナよりは大きいし、しっかりと筋肉がついているが。

「あ〜、道順だけ教えてください。」
「ですが結構な距離だし、傾斜もきついですよ?」
「大丈夫です。訓練場に行くのもトレーニングなので。」

セナが案内を固辞すると、堂上と名乗った隊員が一枚の紙を渡してくれた。
訓練場の見取り図だ。
これなら案内なしでも、行き方がわかる。
セナは「ありがとうございます」と礼を言うと、部員たちに「集合!」と声をかけた。

「これより訓練場に向かいます。」
セナが声を張ると、部員たちから「はい!」と力強い声が返って来る。
主将になったばかりの頃はなかなかうまくできなかった。
だけど今はもう当たり前に指示を飛ばすことができる。

「ライン組は十文字君!レシーバーはヒル魔さん!ランニングバックとコーナーバックはボクについて!」
セナの指示で、部員たちが別れていく。
十文字がセナを見て頷き、ヒル魔が「ケケケ」と笑った。
今回は引退した3年生が参加してくれているのが心強い。
医大を受験する雪光は無理だったが、ヒル魔、武蔵、栗田は来てくれている。
彼らは「休んでたら、身体がなまってしまうから」と理由をつけ、自分のために来ていると言ってくれる。
だが実際、部のためになっている。
練習のバリエーションが増えるし、何より雰囲気が引き締まるのだ。

「じゃあ、各自出発!」
セナがそう叫ぶと、泥門デビルバッツは動き出した。
それぞれのポジションごとに、トレーニングを兼ねた山登りがスタートだ。
走り出したセナを不思議そうに見ている隊員と目が合った。
先程、拳骨を食らった女性隊員だ。

特殊部隊って、女の人もいるんだ。
セナはぼんやりとそんなことを考えた。
ごつい筋肉男たちの中で、その女性隊員は目立っていた。
そして彼女と一緒に行動している男性隊員たちも、この中では小さくて線が細い。

だがそんなセナの思考はすぐにかき消された。
セナ率いるランニングバックは、この山道を駆け上がらなければならないのだ。
余計なことを考える余裕など一切なくなり、セナたちは地獄の合宿に突入した。
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