「アイシールド21」×「図書館戦争」

□第3話「挑発」
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「あの坊や、意外としっかりしてやがるな。」
玄田はセナを見ながら、そう言った。
それを聞いた堂上は「変なこと、考えてないでしょうね!?」と牽制した。

泥門高校アメフト部との合同訓練。
まずは基礎トレーニングを、一緒にやった。
だがやはりその分野は、こちらの圧勝だ。
そもそも向こうは高校生、身体そのものがまだでき上がっていない。

中にはあからさまに郁を見ている者もいた。
図書隊のオッサンたちにはかなわなくても、女には負けられない。
そんな風に思ったのが、丸わかりだ。
だがそういう者たちは、完全にペースを狂わされていた。

「マイペースでね。つられちゃダメだよ〜!」
セナは、部員たちに何度も声をかけていた。
自分たちのペースでやることが重要なのだ。
いきなり身体に負荷をかけたところで、身にならないどころかケガの元だ。

「ダッシュが遅い!」
「もっとよく見て!」
その後の練習でも、セナは自分も加わりながら、何度も指示を飛ばしていた。
一見小柄で可愛らしいセナだが、練習になると空気が変わる。
誰よりもよく動き、声を出し、そして場を引き締めるのだ。

「あの坊や、意外としっかりしてやがるな。」
玄田がどこか面白がるような口調で、そう言った。
最初は噂のアイシールド21が、こんなヤツなのかと驚いた。
顔も身体つきも中性的で、さほど強そうに見えない。
それどころかあのやたらと目立つ金髪青年の隣にいると、気弱にさえ見えたのだ。
だだ実際は、しっかりと部員を掌握している。
部員たちもセナを信頼しており、指示を聞き逃すまいとしているのがわかった。

「変なこと、考えてないでしょうね!?」
堂上は嫌な予感を覚えて、すかさず玄田を牽制した。
だが今までの経験からわかってる。
玄田がこんな声を出すときは、もう「変なこと」を実行しようとしているのだと。
案の定というべきか。
玄田は泥門デビルバッツの練習が一区切りしたタイミングで「小早川君!」と声をかけた。

「何でしょうか?」
セナは玄田のところまで小走りでやって来ると、小首を傾げた。
そんな仕草は幼く見えて、先程までの主将の顔とのギャップが凄い。
玄田はそこには特に触れず「頼みがあるんだが」と告げた。

「君の走りを見てみたい。」
「走り、ですか?」
「ああ。うちにも瞬足がいてな。できれば勝負してくれないか?」

玄田はそう言いながら、訓練場の隅でストレッチをしている郁をチラリと見た。
やはり企んでやがったと、堂上は天を仰ぐ。
セナは考えるような表情で、金髪青年ことヒル魔を見た。

「いいじゃねーか。糞チビ。その勝負、受けてやれ!」
ヒル魔は高らかにそう告げると「ケケケ」と高笑いした。
セナは「ハァァ」とため息をつくと「わかりました」と肩を落とした。
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