不機嫌なドルチェ
□第5章 ヴィオラ
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１１月も半ばになりました。
街は早くもクリスマスモードです。
『パティスリー・ジュリエット』もすっかり浮かれています。主に浮かれているのは王子様ですが。
「ありんこ！そっちの端っこ持って！」
ガーデンテラスの植木にどこからか持ち出してきた電飾ケーブルを引っ掛けようと史信さんが格闘していました。
「フミさん、サングラスしてください！あと帽子も被って！」
瑛太さんがオロオロしています。
こんな表通りの人の行き交う場所で大騒ぎしていたら注目の的ですよ。
「いいじゃん！変装したってバレるものはバレるから。」
「騒ぎになったら困ります！」
見ればもう、砂糖に群がる蟻のように見物人が周りを囲んでますよ。うわーっ写メ撮られてますっ！ネットにアップされますよ！
「ゴルぁフミ！何やってんだっ！」
怒り顔の御曹司が事務所から飛び出して来ました。
「そーちゃん！イルミネーションつけようよ！」
「勝手なことするんじゃねぇ！店の装飾は専門の業者に頼んでいるんだっ！」
「えーえーえーっ！」
拗ねた子供みたいに頬を膨らませます。
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