奥さまは子猫チャン
□第18章 親友の心配
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戸惑うように目を伏せて、友莉は信成さんの脇に身を寄せました。
「何しに来たんだよ。」
友莉の様子を気遣っているのか、信成さんはムッとして拓真さんに突っかかります。フフっと笑うとなぜか拓真さんは私のそばにやってきて肩を抱きました。あれ、相手が違いませんか!?
「悪友が新妻とラブラブなバカンスを過ごそうとしているのを、邪魔してやろうと思ってね。」
「拓真、何度言ったら分かるんだ、俺の紗菜子に手を出すな!」
「こんなに可愛い若妻を一人占めなんて許せないよなぁ。」
「お前、来たばかりなのに追い返されたいのか?」
義臣さんもムッとして私をひっぱり抱き寄せました。
「冗談はこれくらいにしないと、紗菜子ちゃんが涙目になるな。ほら、俺の店のケータリングサービス、オーナー自らデリバリーするんだ、ありがたく喰えよ。」
拓真さんは慣れた手つきで料理をテーブルに並べました。拓真さんのお店のアンティパストはそれだけでも絶賛されているそうで、見た目も芸術品のように豪華でお洒落でその上凄く繊細な味なのです。
「紗菜子ちゃん、友莉、未成年の君達にはスイーツを用意したよ。」
出されたのはフルーツのミルフィーユとティラミスでした。
「わー美味しそう!」
「ノブも拗ねてないで食べなよ。お前の好きな鴨のテリーヌや帆立貝と野菜のマリネも持って来たんだぜ。」
「うっ。」
「バーベキューもあるんだったな。ビールに合うつまみも用意すればよかった。」
「これだけあれば十分だよ。ありがとう、拓真。」
義臣さんはニコリと笑い、アンティパストをお皿にとりわけ、拓真さんと信成さんを誘ってビールを飲み始めました。
テラスでは別荘の厨房を預かるスタッフの方が仕切ってバーベキューの準備が整いました。拓真さんの持ってきた料理もバーベキューも美味しくて食べ過ぎたくらい!お腹がパンパンです。でもデザートはしっかりいただきましたよ。
「紗菜子ちゃん、美味しかった?」
「はい!アンティパストも大人の味だけど美味しかったです!ケーキも素敵!」
「フフ、成人したら、夜のディナーにお招きするよ。カクテルも評判なんだ。」
ワイングラスをカツンと私のオレンジジュースのグラスに当て、拓真さんは微笑みます。わ、本当にトロリと見惚れてしまうイケメンです。
「たーくーまーーー!」
私と拓真さんの間に、義臣さんが割り込んできました。
「ヨッシー、そんなにヤキモチを妬くな。束縛し過ぎるとそのうち愛想を尽かされるぞ。」
「そんなことはないよね、紗菜子。」
「は、はい……」
だけどその……義臣さんったら意外と子供っぽいんですよ。そしてまた見せびらかすように私の腰を抱きイチャイチャしたがるのです。
「ヨシくん、ダメよ。もう人前で紗菜子とエッチなことはしないでね!」
今度は友莉が私をひっぱり義臣さんから引き剥がしました。
「ねえ、今夜は紗菜子と眠りたい!」
「ダメだ、紗菜子は俺のベッドで眠るんだ。」
「さっき、したんだからもういいでしょ?」
「義臣、せっかくだから久しぶりに飲み明かそうぜ。」
拓真さんが義臣さんを後ろから抱え、リビングに戻ってしまいました。
「ふう、やっぱり俺、拓真は苦手だ。あいつのペースに振り回されるよ。」
さっきからムッとしたままだった信成さんは唸りました。
「拓真さんって、義臣さんとは高校の時からのお付き合いなんですって?」
「ああ、兄貴とは正反対の性格なのにずっとつるんでいるんだよ。アイツの父親は有名なシェフで、よくディナーも食べさせて貰ったな。拓真はマネジメントの才能があって親父の店をどんどん大きくして、『リストランテ・トウヤ』は今じゃセレブ御用達の超高級店なのさ。」
「あの、彼女さんはいないんですか?」
「そうだなあ、特定の彼女が居たことはないよ。見合いも断り続けているらしいし。兄貴とベッタリだったから、実はホモなんじゃないかな。」
「ええっ!」
「紗菜子、冗談だから真に受けるな。」
クククと笑って信成さんも義臣さんと拓真さんに交じってお喋りを始めました。
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