奥さまは子猫チャン
□第19章 文化祭で待ってます
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二学期になりました。
9月の末に高校生活最後にして最大の行事、文化祭があります。外部の大学に進学を希望する生徒は受験勉強もありますが、今はクラス全員が一丸となって文化祭の準備に掛かり切り。最後に友達と素敵な思い出を残したいのですよ。だけど、その…いまいち気合いが入りません。
「はぁぁぁ…」
お昼休み、お弁当を食べながら机に肘をつき、私はついため息を漏らしてしまいました。
「紗菜子、どうしたの?悩み事?」
杏ちゃんと麻実ちゃんが不思議そうに尋ねます。
「うっ…何でもないの……」
「なによ、義臣くんと夫婦喧嘩でもした?」
友莉がニヤリと笑います。
「ケンカなんかしてないよ。だって9月になってから、義臣さんはずっとアメリカに行ったきりだもの。」
お仕事の関係で、義臣さんは出張中です。毎日電話でお話はするけれど、顔を見て触れ合ってそれから……とにかく、義臣さんに逢えない時間が長くなり、段々とお腹の中にモヤモヤが溜まってきたのです。
「ふーん、つまり夜の営みがご無沙汰で欲求不満なのね?」
「キャー!友莉ったらこんなところでそんな話をしないでー!」
慌てて友莉の口を押さえると、彼女はクスクスと笑いを零しました。
「やぁねぇ大人になるって。私達子供には分からない悩みよね。」
「違うから!」
ポコポコと友莉を殴っていると、麻美ちゃんが顔を赤らめ、「私も……」とモジモジしながら呟きました。
「私も、って?」
「あの、紗菜子の結婚を祝う会のパーティーで知り合った人と……しちゃった。」
「えええっ!」
私も杏ちゃんも驚いて椅子から飛び上がりました。だって、麻美ちゃんは私達の中で一番大人しくて控えめな子なのですよ。出逢ってお付き合いの期間もそれほど長く無いのに、いきなり深い関係になるような子だとは思えません!
「相手は?あの時知り合ったお医者さま?紗菜子の旦那さまと同い年だよね!?」
「うん、夏休みの終わりにお休みを取って一緒にお出掛けしたの。その時にホテルに誘われて……えへ。」
「うわー……」
ポカンと口を開けたまま、私と杏ちゃんはお互いを見つめ合いました。
「今度の文化祭、遊びに来てくれるって。そうしたら、みんなに紹介するね。」
ウフフと笑う麻美ちゃんは、なんだか一気に大人びて見えました。
「ねええっ!友莉はまだ彼氏居ないわよねっ!?」
杏ちゃんが猛然と友莉に掴みかかりました。
「彼氏なんかいないわよ。あら、杏ちゃんも彼氏がいるんじゃない?あの時知り合った商社マンはどうしたの?」
「うっ……彼は仕事が忙し過ぎて一度電話をしたっきりよ。ああ、麻美ちゃんみたいにお医者さまの彼氏にしておけば良かった!紗菜子、またパーティーを開いてよ!」
「えええっ!」
「私も早く大人の恋がしたい!」
ぐいぐいとブラウスの胸元を掴まれ、私は杏ちゃんに泣きつかれてしまいました。そんなぁ……
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