奥さまは子猫チャン

□第22章 甘く危険な香り
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秋も深まり、校庭も石畳の遊歩道も銀杏の落ち葉で黄色く色付いています。この数日、その景色を窓辺で友莉がぼんやり眺めています。

「どうしたの?悩み事でもある?」

終礼が終わり、私は彼女に話し掛けました。

「うーん、悩み事ねぇ…ハッピーな紗菜子には無縁なことよね。」

クールな友莉ははぐらかします。いままではたいてい私が悩み事を相談し、友莉がそれを解決する、そう関係でした。もともと気丈な友莉は人に頼るより自ら解決してしまうので、時々は甘えて欲しいと思うんですよね。

「たまにはお茶して帰ろうよ。今日は塾も無い日でしょ?」

「そうね、最近行ってなかったね!でも私、紗菜子の家で中尾さんのシフォンケーキが食べたいな。」

「分かった、中尾さんにお願いしておく!」

早速電話で連絡すると、中尾さんは喜んですぐに作って帰りを待っていると言ってくれました。

桂のお屋敷に着き、中尾さんお得意の紅茶のシフォンケーキをいただきました。どんな有名パティシエが作るより、私は中尾さんのケーキの方が美味しいと思っています。友莉もそう思っているようで嬉しいわ。早速お茶をすると、友莉は何度もため息を吐くのです。これは絶対何かあります、少しでも力になりたい!

「友莉、やっぱり変だよ。悩み事なら私に打ち明けて?」

「……紗菜子、怒らないかな。」

「最後まで話は聞くわ。」

「あのね、実は、拓真のことなの。」

ドキリとしました。拓真さんと何があったのでしょう?

「あ、そんなに心配しないで!まだ何にも無いんだもの……」

友莉はポワンと目元を赤らめ、ケーキをパクリと頬張りました。

「この前のパーティーで、里香さんと一緒だったじゃない?あの時の二人の姿がお似合いで、気になって拓真に直接聞いたのよ。そうしたら、里香さんとはただの友達で、里香さんに頼まれて一緒に来ただけだって…」

私がお話しした時も、拓真さんは里香さんとの関係を何でもないように言っていたけれど、態度はもう少し親密な気がしたのです。でも今は友莉の話を黙って聞きました。

「それで、帰り際に言われたの、今度また一緒にご飯を食べようって。私のことは恋愛対象じゃないって分かっている、なのに拓真のことが頭から離れなくて、勉強も手につかないのよね…」

「本気なの?だったら告白してみれば?」

「いやよぉ。振られるのがみえみえだもの。」

ケラケラと笑う友莉に呆れ、そのあとは拓真さんの話には触れずお喋りして過ごしました。夕食まで一緒にいたら、珍しく信成さんが帰って来ました。最近は新しい大規模土地開発事業に携わっていてお帰りが遅かったのですよ。



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