奥さまは子猫チャン
□第23章 看病します
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季節はすっかり冬になりました。木枯らしが吹き荒れて、とても寒い日が続きます。
お夕飯をいただいていたら、義臣さんがお帰りになりました。こんなに早い時間に帰ってくるなんて珍しい!私は急いで玄関にお出迎えに行きました。
「お帰りなさい!」
いつものように頬にキスしようとしたら、義臣さんはフラフラと揺れて、右手を差し出して私を制しました。
「紗菜子、近づいてはダメだ。」
「どうして?」
「熱がある。インフルエンザかもしれない。」
「えええっ!」
見れば義臣さんのお顔は真っ赤です。息も荒く苦しそう。
「私、看病します!」
「ダメだ、紗菜子に伝染(うつ)す訳にはいかない。もうすぐ期末テストだろう?」
「期末テストより義臣さんの方が大切です!」
「ありがとう。だが、看病は大森と宮嶋に任せるよ。」
「そんな!」
義臣さんは頑として私を近づけてはくれません。
「奥さま、心配なさらないでください。私どもが看病いたしますから。」
大森さんが義臣さんの肩を支え、私達夫婦の寝室に消えて行きました。そんな…旦那さまの一大事なのに!
「紗菜子さま、大丈夫ですよ。すぐに良くおなりです。」
「でも…看病ぐらい私がしたいのに…」
「旦那さまがダメとおっしゃっているのですから、今日のところは辛抱してください。」
宮嶋さんが優しく私を諌めてくれました。
しばらくして、桂家の主治医である沢登先生がいらっしゃって診察された結果、インフルエンザではなく風邪だと分かりました。良かったですよ!
だけど、今夜は私の部屋で独り寝することになりました。毎晩のように愛されて、抱きしめられて眠るのが当たり前になっているから、独りで眠るのは寂しいです…
夜中にそっとお隣の部屋をのぞきました。大森さんが義臣さんのおそばについていました。
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