業火の果て

□第28章 純真
4ページ/5ページ


「チビあきの写真をもらったよ。見る?」

「見たいっ!」

赤ん坊の頃の写真を次々と見て、華音は「可愛いっ!」を連発した。

父と子で撮った写真はリビングに飾った。

「ここまでシュウに送ってもらったんだ……途中で事故を起こしそうだったから助かったよ。」

「シュウが?……元気だった?」

「ああ、全然変わりない。」

華音は複雑な顔をした。

「シュウともう10年くらいまともに逢っていなかったんだな……いろいろあったのに、あいつの顔を見たら嬉しい気持ちが一番強かった。」

元気無くうなだれる彬従を華音はぎゅっと抱きしめた。

「アキ……お風呂に入ろう!」

「えっ?」

驚く彬従の服を剥ぎ取り、華音はバスルームに連れて行った。

「どうしたの?」

「アキじゃない匂いがしてイヤ……」

キスをしながら石けんで彼の身体をゴシゴシ洗った。

いつもなら肌が触れただけで猛る彼の身体は萎えたままだった。

「ごめん……疲れてるのかな。」

「いいの。一晩中抱っこしてあげる。」

柔らかく豊かな胸に彬従を押し込めるように抱きしめた。

タオルで身体を拭き、パジャマを着せた。

彬従はぼんやりとされるがままだった。

まだ早い時間だったが、ベッドに連れて行き添い寝すると、彬従は華音の胸に埋もれてすやすやと寝息を立てた。

「アキ……もうどこにも行かないで。」

眠る彬従に唇を重ね、華音は静かに涙を流した。



翌日、通常通り出勤した。

祐都のピリピリとした緊張が伝わってきた。

「昨日はどうだった?」

「由良にあきつぐを頼んできた。みんなに愛されて幸せな子だよ。」

祐都は心配そうに眉を寄せた。

「アキ、もう二度と天日の家に近づいてはいけません。」

いつになく瑛の口調が厳しかった。

「きっと瑠璃さまの策略です。」

畳み掛けるように続けた。

「あの方はアキを天日財閥に入れようと求めていた。そのためには娘だろうが孫だろうが利用する方なのです。」

「大丈夫。もう逢いには行かないよ……」

うなだれる彬従を見て、祐都も瑛も心を痛めた。



何も考えまいと仕事に集中した。

新規の案件も順調に進んでいた。

しかし、毎晩のように抱き合った彬従が、求めて来なくなった。

華音は彼を抱きしめたまま眠れない夜を過ごした。

「私が嫌いになった?」

胸に顔を埋め、華音は尋ねた。

「まさか。今でもお前が欲しいんだ。なのに身体が反応しない……」

「キスしてもいい?」

「華音の好きなようにしていいよ。」

彬従は大きな手で華音の頭を撫でた。

唇を重ね、舌を絡めた。

彬従の鼓動が早くなる。

触れる指先に力が入る。

華音はシャツを広げ舌を這わせた。

「俺は欲望のままに沙良を抱いたことを後悔している……」

手で顔を隠し、彬従は呟くように言った。

「沙良を好きだと思うことはあった。だけど華音を抱けない不満を沙良にぶつけていたのは本当なんだ……」

華音は答えずに下着をずらし彼の身体を口に挿れ舌で刺激した。

徐々に血が集まり堅くなっていく。

「何も考えないで……私を感じて……」

華音は上に跨がり彬従を自分に押し込んだ。

「アキ、後悔なんかしなくていい。私だけを求めればいい。」

腰を振ると快楽のうねりが華音を捕らえた。

何度も押し寄せる絶頂に華音は淫らに揺れた。

「華音……華音が欲しい。もっと、もっと。」

彬従は我を忘れて激しく突き上げた。

覆い被さったまま中で果て、華音を離すまいと固く抱きしめた。

「……俺の想いがお前の奥で実を結べばいいのに……」

「もし私がアキの子供を産んだら、やっぱりアキに似ているのかな。」

華音はクスクスと笑った。

「きっとそうだよ。優しい好い子になるよ。」

彬従も嬉しそうに笑った。

久しぶりに見る彼の笑顔だった。

―――アキは渡さない。誰にも……

華音は彬従を押し倒し、唇を重ね彼の欲情を誘った。



あきつぐからは毎日メールが届いた。

学校であったこと、友達のこと、由良や葵や茜のこと、時々柊のことが話題に上った。

寝る前にそれを眺めて彬従はホッとため息を吐いた。



沙良の病状に変化は無かった。

―――このまま何も起きなければいいのに……

暗い気持ちで目を閉じると、華音が唇を重ねてきた。

「アキ、私のことだけ考えて……」

煽るように激しく悶え刺激した。

彼女の与える悦楽に彬従はますます溺れていった。



あきつぐは時折週末に泊まりがけで遊びに来た。

三人で本当の親子のように時を過ごした。

華音にまとわりつき小さなあきつぐはキスをねだった。

「チビあきはパパに似てキス魔なのね!」

華音は笑ってムギュッと抱きしめた。

「ぼく、華音ちゃんが大好き!」

彼は真剣だった。

*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ