天狼の彼方
□第7章 決別
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「美味しーいっ!レンって天才っ!」
蓮の作ったケーキを頬張り、里緒菜と真悠は歓声を上げた。
「本当に美味しいわ。華音ちゃんの味にそっくり…」
亡き姉を思い出し詩音は涙ぐんだ。
「アキちゃんの分はあるの?」
季従が切り分けられたケーキを見て心配した。
「大丈夫。アキおじさんの分は今からまた作るから。もう少し時間を置いた方がオレンジの味が馴染む。」
おかわりを要求する彬従に、蓮はケーキを切り分けてやった。
「丸ごと一つ持って行くのか?アキなら食べかねないけど一応病人だぞ。」
父の柊が尋ねた。
「ユウタ先生にも差し入れするんだ。」
「大神はいないよ。今日からスイスに行くらしい。」
「なんだ、ユウタ先生と久しぶりにゆっくり話したかったのに。」
「久しぶりに逢った父親とも少しは話をしてくれよ。」
「父さんと話すことなんか無いだろ。」
蓮はぷいと横を向いた。
「東京に帰ったら、私にもレンの手料理をご馳走して。」
甘えるように真悠がねだった。
「レンのマンションで鍋パーティーをしようよ!」
里緒菜が誘った。
「勝手に決めるなっ!」
ムッとして、蓮は台所に向かった。
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