奥さまは子猫チャン
□第19章 文化祭で待ってます
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高校三年生の出し物は、例年喫茶と決まっています。教室の半分を使い、クラス単位で思い思いの企画を立て、文化祭にいらっしゃるお客様をおもてなしするのです。
私達3年C組は、イギリス風のティーサロンで計画を進めています。サンドイッチやスコーン、ミニケーキに紅茶を添えてお出しする予定です。
「いっそ、メイド喫茶にしちゃったら?」
クラス委員の堀内さんが意外にも大胆な発言をしました。メイド喫茶って……なんだか義臣さんがはち切れるくらい喜びそうな悪い予感がします……
「それとも執事喫茶とか?男装しておもてなしするのも悪く無いわ。なんたって、このクラスには学校一のイケメン友莉がいるんだもん。」
「誰がイケメンだー!」
杏ちゃんが提案すると、クラスのみんなが「キャー!」と雄叫びを上げました。うん、彼女に執事の格好をさせたらきっと大評判になるわ!
友莉は思いっきり嫌がっているけれど、クラス全員すっかりその気になり、執事喫茶に企画変更となりました。
その夜、さっそく義臣さんに文化祭での出し物のお話をしました。
「それでね、C組は執事喫茶をすることになったのですよ。義臣さん、文化祭までに日本に戻って来れますか?」
「そうか、まだ仕事が片付かないのだが……紗菜子の文化祭は絶対に観に行くよ。」
「待ってます……だから、早く帰ってきて……」
「紗菜子、そんな声を出されると、ああ……すぐにでも飛んで帰ってあなたを抱きしめたくなる……」
電話越しに耳元で囁く義臣さんの声が甘く熱くて、私のお腹の奥はジンジンと痺れてしまいました。
文化祭初日から、沢山の見学者が来て大賑わいになりました。文化祭実行委員の杏ちゃんは委員会の赤いハッピを来て走り回っています。バスケ部だった友莉は部活の後輩のお手伝いをしつつ、クラスの出し物にも参加します。杏ちゃんが借りた燕尾服を着た友莉はカッコ良すぎてみんなの垂涎の的。後輩達におねだりされて次々とツーショットで写真を撮られまくっていました。
「紗菜子!」
麻美ちゃんが一人の男性と腕を組んで現れました。優しい笑顔の真面目そうな人です。
「私の彼氏の飯村さんよ!」
「紗菜子ちゃん、お久しぶり。義臣は来ているの?」
「いいえ、アメリカに行ったきりなんです。戻って来れるかどうか……」
「そうか、逢ったら礼を言いたかったんだ。君達のおかげで未来の花嫁と巡り合うことが出来たんだから。」
飯村さんは頬を染めて麻美ちゃんと見つめ合いました。
「花嫁、って?」
「私達、高校を卒業したら結婚することにしたのよ。」
「えええっ!」
杏ちゃんは合流した途端、爆弾発言を喰らい、思わず仰け反っていました。
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