奥さまは子猫チャン
□第20章 奥さまデビュー
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授業が終わって帰り支度をしていたら、友莉がやってきました。
「紗菜子、アレクサンドラ・ブルームのパーティーに出るのね。」
「うん、義臣さんと一緒なの。」
「私もノブくんに誘われたのよ。」
「良かった!一人じゃ心細かったから……」
「大丈夫、若い女の子も沢山招待されているわ。人気モデルやタレントも大勢来るのよ。」
「そうなんだー……」
友莉の実家の松藤家は、大手の宝飾品メーカーなので、友莉は昔からパーティーに出席し慣れているのです。
「もっとも、紗菜子はヨシくんのお仕事関係の方々とお付き合いがあるから、遊び感覚ではいられないかも。」
「どうしよう……パーティーなんて行き慣れていないのに……」
「ウフフ、きっとヨシくんが全力で護ってくれるわよ。」
それから私は友莉のおうちにお邪魔して、彼女の着て行くドレスを一緒に選びました。友莉のドレスはとてもセクシーなものばかり。だけどスタイルの良い彼女にどれも良く似合います。
「ノブくんが、赤が似合うって言うのよね。」
友莉は信成さんに買ってもらったという真っ赤なドレスを当ててみせてくれました。
「凄く素敵、それがイイわ!」
「分かった、これにする!パーティーが楽しみね!」
私も『楽しみ!』と言いたいところですが……やっぱり不安が募ります。
桂のお屋敷に戻ると、義臣さんの他に第一秘書の相馬さんが待っていました。
「紗菜子、これから相馬に今度のパーティーに出席する主な招待客を説明してもらう。頭に入れておいてくれ。俺は別件で手が離せないから、終わったら隣りの部屋へおいで。」
「分かりました。」
「では奥さま、この資料に目を通してください。」
相馬さんは一人一人の名前と経歴、そして桂グループとの関わりを説明してくれました。今回の招待客は少なめで、それでも70組いらっしゃるそうです。芸能人の方も多くてそれなりにお名前と顔は一致します。アパレル業界の関係者、マスコミ関係者、いろいろな会社の経営者……有名ブランドをお買い上げされるだけあってみんなお金持ちなのでしょう。友莉の他には刀祢拓真さんの名前もあり、披露宴でお逢いした方も多くて、全くの見知らぬ世界では無くてホッとしました。
「奥さま、これから公の場では、あなたは『桂義臣の妻』という職業に就くと考えてください。パーティーは遊びでは無くビジネスの場。あなたの行動次第で桂グループの信用も左右されるのです。」
相馬さんがいつもの不機嫌そうな顔でそう言いました。
「私に……出来るのですか?」
不安が急に湧きあがって来ました。もし、私のせいで義臣さんの名に傷を付けてしまったら……
「こんなことを言うのは失礼だと思いますが、あなたはこの世界では新入社員のようなもの。だが、決して気追うことはありません。桂義臣の妻として堂々としていらっしゃい。だって、あなたはあの桂義臣が選んだ女性なのだから。あなたは義臣の最高の財産です。そして、義臣もまたあなたの財産だ。どんな人にも引けなど取らないでしょう?」
「財産、ですか?」
「そうですよ。あの義臣にあれだけ溺愛されているんだ。あなたにはどんな宝石よりも高価な価値があると自信を持てばいい。」
相馬さんは可笑しそうにククっと笑いました。
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