奥さまは子猫チャン
□第20章 奥さまデビュー
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会場に入るとすぐに挨拶されたのが、このパーティーの主役、アレクサンドラ・ブルームさん、御年72才、金髪にスミレ色の瞳をしたゴージャズなマダムです。今でもデザイナーとしてバリバリの現役なのです。お隣にいたイケメンの中年男性が息子さんのジェロームさん。フランス語でまくし立てられ急に抱きつかれました。何を話し掛けられたのかは分かりませんが、義臣さんの渋い表情を見ると多分良からぬことなのでしょう。
中はすでに招待客でいっぱいでした。義臣さんと私を値踏みするような好奇に満ちた目が突き刺さります。落ち着こう、恥ずかしがることは無いんだ、だって私は義臣さんの奥さんなのだから。
「紗菜子!」
真っ赤なドレスを着た友莉が信成さんとやって来ました。
「そのドレス、素敵!いつもの紗菜子じゃないみたい!ダイヤのネックレスも素敵よ。」
「ウフフ、大人っぽいでしょ?」
「うん、大きな胸がエッチだわ!」
「ひゃ、エッチとか言わないで!」
友莉に冷やかされ思わず胸元を隠しました。
その時、会場が一瞬ざわめきました。
「やっぱり来たか……」
信成さんがぼそりと呟き入口を見据えました。そこには刀祢拓真さんと連れの女性が居たのです。その女の人の美しさに息が止まりそうでした。栗色の長い髪は胸元でくるりとウェーブを作り、スラッとした肢体に良く合うパールホワイトのマーメードドレス。煌びやかな宝石に負けることの無いハッキリとした顔立ち。こんなにキレイな人を今までに見たことがありません。
「あれは誰?お知り合いですか?」
私は信成さんにそっと尋ねると、彼は困ったように眉を寄せました。
「あの人は二階堂里香さん、兄貴の元婚約者だよ。拓真の奴、なんだってあの人を連れて来るんだ。」
ハッとして私は義臣さんを見上げました。
義臣さんはいつもと変わらぬ涼しい顔で二人に視線を送っていたのです。
☆NEXT☆ 第21章 元婚約者の存在