奥さまは子猫チャン

□第21章 元婚約者の存在
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「紗菜子ぉ!」

聞き慣れた声がして振り向くと、同級生の麻耶がいました。彼女のお父さまはアパレル関係の会社経営者です。ファッションセンスが抜群で、今日のドレスも大人びた彼女に良く似合っています。彼女は親しげに私に腕を絡め、耳元でそっと囁きました。

「ねえあなた、注目の的よ。二階堂さんもよくここに来たものだわ。婚約者を他の女に奪われておいて、良く同じ場所にノコノコと顔が出せるわよねぇ。」

「奪われた……なんて、そんなこと……」

「ああ、紗菜子が悪い訳じゃないわよ。て言うか?二階堂さんったら今度のことで面目丸潰れなの。それに彼女のご実家は最近落ち目だし。今まで女王さまきどりだったから、みんないい気味だと思っているのよ。」

クククと可笑しそうに嗤うと、麻耶は顔馴染みらしい女性タレントの元に行って里香さんを眺めながらまたクスクスと噂話をしていました。

なんだか……とても嫌な気持ち……噂の種になるなんて、思ってもみなかったから。

すると義臣さんが私の腰に手を掛け、キュッとそばに抱き寄せました。心配そうに私の表情を伺っています。

「大丈夫です、義臣さん、まだご挨拶する方が残っていますよね?」

「ああそうだね、あなたはとても良くやっている。若いのにしっかり者だとみんな誉めてくれるよ。」

「それは相馬さんのおかげです。だって、教えられた通りにご挨拶しているだけですから。」

「全く……紗菜子は出来の良い生徒だ。相馬も教えがいがあったと喜ぶよ。」

義臣さんは人目も憚らず私を抱きしめチュッチュと唇を合わせるのです。もう!どこでも油断が出来ませんよ。



和やかに歓談が進み、パーティーは終了しました。お土産に新作パフュームをいただきました。なんだか大人の香りです!

「兄貴、ちょっと……」

信成さんがやってきて、会社経営者だという男性や義臣さんと少し離れた場所で商談らしいお話を始めました。

「紗菜子、お疲れ。初めての大舞台にしちゃ上出来よ!」

「はあああ、本当に緊張して疲れたわー……」

友莉にポンと肩を叩かれた途端に力が抜け、彼女の胸に抱きついてしまいました。

「紗菜子さん、今日は突然押し掛けてごめんなさい。私のために嫌な思いをさせてしまったわね。」

後ろから声を掛けられました。いつの間にか里香さんがすぐそばに来ていたのです。

「いえ、そんなことはありません。私こそ、里香さんにお逢いできて嬉しかったです。」

「ありがとう!これからもきっと逢う機会があるでしょうから、仲良くしてちょうだい。」

里香さんは花のような笑顔を浮かべました。とても華麗で、ますます見惚れてしまいました。



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