奥さまは子猫チャン

□第21章 元婚約者の存在
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「だけど、義臣ったらあなたにホントにデレデレなのね。彼の好みがこんなに若くて可愛らしい子だとは思わなかったわ。あの人、真面目で堅物と思われているけど、エッチの時は情熱的でしょ?あなたのことも毎晩抱き潰しているんじゃない?」

「えっ……それは……」

「ウフフ、私達だけの秘密、かしら?」

里香さんはくるりと背を向け、拓真さんの元に優雅に歩いて行きました。なぜ、そんな、私達の秘密だなんて……

「紗菜子、しっかりして!」

友莉に声を掛けられ、ハッと意識を取り戻しました。でなければその場に座り込んでいたかもしれません……



上の空のまま、桂のお屋敷に帰って来ました。平然を装ってお部屋に入り着替えを済ませようとしたら、義臣さんに寝室へと連れていかれました。

夫婦の営みに使う大きなベッドに腰掛けると、義臣さんは私を膝の上に乗せて抱き締めました。

「紗菜子、俺に言うことは無い?」

「あ、あの、お疲れさまでした、今日はとても楽しかったです、お土産のパフュームもとても好い香りで……」

「最後に里香と話していただろ?」

ギュッと腕の力が強くなり、私は義臣さんの胸に埋もれました。

「何を言われたのか、俺に言いなさい。」

「イヤ……です。」

「俺に聞かせたくないってこと?」

スリスリと私の頭を撫で、額に口づける義臣さんは切なそうなお顔でした。

「義臣さんと、里香さんは……深い関係だったのですね……なのになぜお別れしたのですか?」

我慢するつもりだったのに尋ねてしまいました。しばらく私を抱きしめたままでいた義臣さんはそっと口を開きました。

「俺が里香に初めて逢ったのは15才の時で、婚約者だと紹介された。俺は、自分で言うのもなんだがとても真面目な優等生でね、親の言い成りに育ってきた。進めと言われた学校に進み、やれと言われた仕事に就いた。結婚も当たり前のように里香とするものだと思っていたんだ……」

ドクンドクンと静かな音を立てて義臣さんの心臓が波打ちます。目をつぶってその音を聞いていると、とても安らかな気持ちになりました。

「当然、セックスもした。俺にとって彼女は初めての相手だった。里香はそれなりに遊んでいたようだがね。それでも構わないと思った。彼女との相性は正直悪くは無かったから。だが、その……いくら抱いても、愛しいと言う気持ちにはならなかった。紗菜子を抱く時のように……」

私を抱えたまま、義臣さんはベッドにごろんと仰向けになりました。肩に顔を埋め、義臣さんの吐息を感じながら私は話に聞き入りました。

「一昨年、そろそろ結婚をという話が持ち上がった。だがちょうど、母が倒れて亡くなってしまった。喪が明けるまで入籍も控えることになって、俺はふと思ったんだ、このまま結婚していいものかと……結婚話を先延ばしにして、仕事も忙しくこなしていた、そんな時にあなたに出逢ったんだ。」

義臣さんは起き上がるとスーツを脱ぎ捨て、細くて長い指を私の背中に這わせました。スルリとジッパーを下ろし、裾から捲り上げドレスも下着も剥ぎ取り、全裸の私を愛おしそうに撫で回しました。



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