奥さまは子猫チャン

□第26章 そばにいるから
2ページ/3ページ

お夕飯をいただいて、お風呂も済ませ、私はお部屋でゴロゴロしていました。友莉からは何の連絡も無く、義臣さんもお帰りではありません。

「紗菜子。」

トントンとドアが叩かれ、私が開ける前に信成さんが顔を出しました。

「どうしたんですか?」

「ほい!合格祈願のお守りだよ。」

手に二つ、学問の神様を祭って有名な神社のお守りを持っていました。

「ノブさん、私、附属大学への進学が決まったのです。」

「そうか、良かったな!で、友莉は?」

「友莉のことは分かりません……ノブさんはお話ししていますか?」

「いや、クリスマスの頃にどうしているかなーと連絡したんだけど、返事が来なくて、正月も全然で……これ、友莉の分のお守りなんだ。逢ったら渡しておいてよ。」

ポンとお守りを手渡され、信成さんは「お休み!」とドアを閉めて行ってしまいました。信成さんにも心配を掛けたままなんて……私は「信成さんからお守りを預かった!」と友莉にメールを送りました。

じりじりと気持ちは逸ります。なぜ、全然、返事をくれないのでしょう……ずっと友達だったのに、苦しいことがあるなら私に言ってくれればいいのに……

握りしめていた携帯電話がブルルと震えました。液晶画面の文字を見て、私は慌てて着信ボタンを押しました。

「友莉!」

「……紗菜子?元気そうだね。大学、付属に決まったんだね、おめでとう。」

「ありがとう!友莉、どうして連絡くれなかったの、今どこにいるの?」

「……ずっと、拓真のマンションにいる……」

私は耳を疑いました。

「どうして?どうして、拓真さんのマンションにいるの?」

「去年のクリスマスに……お食事に誘われたの。受験の前の景気づけだよって。その時……我慢できなくて、拓真に好きだって告白したの。」

ドクンドクンと嫌な鼓動が私の胸を締め付けます。

「拓真は……受験前だから返事は出来ないって言ってくれた。でも私、抑えきれなくて、私のことを好きじゃ無くてもいいから一緒に居て欲しいって、拓真のマンションに連れて来てもらったの。拓真は……全然、手も出さなかった。それからずっと、お昼は予備校に行くってお母さんには言って、拓真のマンションで勉強しているの。彼、お仕事があるからおウチにはいなくて、夜帰ってきてちょっとお話ししたら、私の家に送ってくれるんだ……」

「……そんなことやめなよ、拓真さんは……」

『どんな女性とも本気で付き合う気は無い』と言っていた拓真さんの言葉を思い出しました。だけど友莉にそんなことは言えず、グッと堪えました。

「友莉、もうすぐセンター試験だよ。もう少しで本番なんだから、よそ見なんかしないで集中しなよ。」

「紗菜子は……結婚も、大学も、順調に決まったものね。義臣くんに大事にされて将来安泰だものね。」

「友莉……」

「私のことは、放っておいて。」

ぷつりと電話は切れ、私は呆然と電話を握りしめていました。



*
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ