奥さまは子猫チャン

□第27章 向き合って
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「そばに居たら、きっと友莉は期待するはずです……」

「そうだね。だけど、彼女は自分の気持ちに気付いていない……今は恋に恋しているだけだ。受験と言う現実から逃避したがっているのかもしれない。受験が終わって環境が変われば、俺への気持ちも冷めるんじゃないかな。」

「そんな……」

拓真さんは空いたグラスを義臣さんに差し出しておかわりを催促しました。

「大人ってズルイからね。気持ちをはぐらかすくらいのことは出来るものさ。」

「拓真みたいに女を泣かせ続けた奴なら、簡単なことだろうよ。」

憮然として義臣さんはワインを注ぎ足しました。

「フン、ヨッシーみたいにクソ真面目な奴には到底無理な芸当だろうな……コイツね、大学二年の夏まで童貞だったんだぜ。それを里香に拉致られてハワイの別荘で初体験を奪われて……その後も里香以外とは肉体関係も無かっただろ?経験不足のくせに、紗菜子を満足させているのか?」

「た、拓真、バカ野郎!それ以上言うなっ!」

「ククク、ヨッシーの黒歴史なら、俺がいつでも教えてあげるからね。」

「何が黒歴史だっ!」

「お前ばっかり幸せになるなんて、面白くないじゃないか。」

ケラケラと笑いながら拓真さんはからかい続け、義臣さんは必死で抵抗しています。満足は……いつもしてますけど?私は唖然として二人の様子を眺めていました。

だけど、友莉の気持ちをそんな風に捕えているなんて……ひんやりと冷めた拓真さんの心に、私はふと寂しさを覚えました。

義臣さんが席を離れ二人きりになり、私はふと尋ねました。

「拓真さんは、好きな人がいるんですか?」

「うーん、いるっちゃいるけど?」

「それは、誰ですか?」

「君の旦那だよ。」

「えええっ!?」

「ククク、本気にした?紗菜子ってからかい甲斐があるよね。」

「もう、拓真さんはぁ!」

可笑しそうにお腹を抱える拓真さんに、私は掴みかかりました。

「拓真さん、お願い、友莉とちゃんと向き合って、友莉の気持ちをおもちゃにしないで。」

「大丈夫、傷つけたりしないよ……心配するなよ、子猫チャン。」

突然、拓真さんはチュッと私の頬に唇を押しつけました。

「きゃあ!」

「たーくーまぁぁぁぁーーー!許さぁぁぁんっ!」

「本気じゃないから!冗談だから!」

戻ってきた義臣さんが遭遇してしまい、そのあと二人は子供のようにジタバタと揉み合いました。

なんだか、結論が出るどころか、ますます混乱した夜なのです……



☆NEXT☆ 第28章 仲直り
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