奥さまは子猫チャン
□第34章 何年でも
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拓真さんに誘われたのは、若手経営者達の懇親会……いわゆる『お見合いパーティー』です。
「去年のこのパーティーで、俺と紗菜子は出逢ったのだな。」
感慨深げに義臣さんは中庭を見渡しました。
「私、ここで猫と遊んでいたのですね。」
「そうだよ、凄く可愛らしくて振り向いたその笑顔が愛らしくて、一目で心を射抜かれたのだ。」
「なんだかとても不思議です。私はその時ただ驚いて逃げ出してしまったのに……義臣さんが私を見つけていなかったら、私達は巡り合うことは無かったのかも……」
「いや、俺達はきっとどこかで出逢っていたさ。」
義臣さんは私の顎に手を添え、そっと唇を重ねました。きっとそう、義臣さんと私は必ず添い遂げる運命だったに違いないと、蕩けるように義臣さんに見惚れてしまいました。
「義臣、既婚者のお前が何をしに来たんだよ。」
知り合いの男性達から次々に声を掛けられ、義臣さんはそのたびにもっともらしい言い訳をしてはぐらかしていました。
拓真さんはお一人で、会場の一番奥にいました。
「遅くなってすまない。お前の恋しい人はどこだ?」
「まだ来ていないようだ……やはりこんな会に一人で顔を出すような女では無かったかな。」
ワイングラスを傾けて、会場を見まわしてふと目を止めました。私も義臣さんも拓真さんの視線に目を向けると、周りをかき消すほど華やかな女性がそこに立っていました。拓真さんが親しげに手を振り招くと、その人は平然とにこやかに笑顔を向けて歩み寄って来ました。
二階堂里香さんです。
ドクンと胸が痛みました。彼女は義臣さんの元婚約者、お逢いするのはためらわれます。
「珍しい人がいるものね。既婚者の義臣と、結婚に興味の無い拓真がお揃いだなんて。」
「里香こそどうしたの?あなたが来ると聞いたから、俺も顔を出したんだよ。」
「結婚寸前に婚約者に逃げられて行き遅れた女が、婚活の場に顔を出しても良いでしょう?」
ハラハラとします。華やかな笑顔の里香さんの口から、どんな辛辣な言葉が飛んでくるのでしょう?
ふと指先に触れるものがあり、そのまま手のひらを絡め取られました。義臣さんがそっと私の手を握ってくださったのです。
私は義臣さんを見上げて、「大丈夫」と声を出さずに唇を動かしました。
「ついに義臣を諦めて、新しい恋を探すのかい?」
「拓真ったら、相変わらず意地悪ね。本人を前にして、嫌味なことを言うのはやめて。」
「俺は小学生レベルでね、気になる女の子はいじめてしまうタイプなんだ。」
ハッとしました。拓真さんの好きな人って、もしかして?
「俺は今日、拓真の付き添いで来たのだよ。コイツが恋の告白をしたいと言うのでね。」
「まあ、拓真が?どんなお嬢さんかしら。私にも教えてちょうだい。仲良くなりたいわ。」
コロコロと里香さんは笑います。
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