奥さまは子猫チャン
□第34章 何年でも
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「待って、里香さん!」
「紗菜子、いいよ。」
拓真さんは追い掛けようとした私の手を掴んで引き止めました。すぐに義臣さんに引き剥がされましたけど……
「う、やっぱり俺、振られたみたいだな。」
「酒なら付き合うぞ、ただしお前だけ飲め。昨夜はつい深酒をしたおかげで、今朝は紗菜子に怒られたからな。」
「ひゃ、怒ってなんかいませんよぉ!」
「朝起きるなり、キス攻めにしたのは誰だい?」
イチャイチャと私に絡んでくる義臣さんを呆れ顔で眺め、拓真さんは深いため息を吐きました。
「フフ、紗菜子、今夜も旦那を借りていいかな?いろいろと今までの愚痴を言いたいんだ。」
「はい、どうぞ!思い切りぶつけてください。でも、里香さんのこと、これっきりでいいんですか?」
「そうだね、今まで待ったんだ、これからまた何年でも彼女が俺に振り向くまで気長に攻めて行くさ。」
「本当にお前は恋愛が下手だな。攻める時は攻めないと。」
「幸せそうなお前が、無性に憎いんだが?」
拓真さんはこともなげにアハハと笑いました。
私達は会の途中で桂のお屋敷に帰りました。
「おかえりー!」
なぜか、友莉と信成さんがお出迎えしてくれました。
「見て、ノブに買ってもらったの。」
左手には大きなダイヤモンドが付いたリングが光っていました。
「婚約指輪の代わりよ。当分これで我慢するわ。」
「友莉、昨日はどうだったの?」
「エッチはしていないわよ!一緒にベッドで眠っただけ。そんなに簡単にヴァージンは渡さないから!」
「えええっ!そんな、ノブさんが可哀想だわ!」
「さすが、紗菜子は物分かりのいい子だよ!」
「じゃあ、今夜こそ紗菜子と二人で語り明かすから!」
「俺もヨッシーと語り明かすよ、昨日はビジネスの話ばかりだったらか、今夜は恋愛相談に乗ってもらおう。」
「兄貴、俺も相談に乗ってくれ!」
「恋愛相談?なぜ、この俺が?」
うんざりと顔をしかめて、義臣さんは私に耳打ちしました。
「紗菜子、拓真と信成を酔い潰したらあとで必ず迎えに行くから、鍵は開けておいてくれ。」
「分かりました、きっと来てくださいね!」
そうして、私は友莉に、義臣さんは拓真さんと信成さんに連れられて引き離されてしまいました。
その夜は、ジリジリと疼くお腹を抱えたまま、友莉のノロケ話を聞き、そしてやがてドアが開き、義臣さんが忍んで来るのをウキウキと待ち続けたのです。
☆NEXT☆ 第35章 今日からは