奥さまは子猫チャン
□第36章 バトル勃発
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大学の入学式までの二週間、私と友莉は桂のお屋敷でまったりと過ごすことにしました。
四月の始めにアメリカに行ってしまう信成さんともこの家で顔を合わせることが出来るからです。二人の交際は順調のようで、今までのようにふざけ合ったりイチャイチャしたり、仲の良い恋人同士のよう……でも、相変わらず友莉はエッチを拒絶していて、それに素直に従う信成さんが可哀想で仕方ありません。
「紗菜子、紗菜子、起きて、朝よ。」
ぐらぐらと肩を揺すられて私はハッと目を覚ましました。
「あ……おはよ、友莉。」
「おはよ、じゃないわよ!もう8時よ、ヨシくんのお見送り、行かなくていいの?」
「きゃー大変っ!」
私はベッドを飛び出しました。昨夜はお泊まりした友莉に「紗菜子と寝るー!」と拉致られて、お喋りしながら一緒に寝ていてしまったのです。話し終わったら義臣さんの待つお部屋に帰るつもりだったのに!
食堂に義臣さんの姿は無く、急いで玄関に向かうともうお出掛け寸前でした。
「おはようございます、義臣さん!」
「おはよう、昨日の夜は楽しかった?」
義臣さんはメガネの奥で細い目を尖らせます。目の下には隈があるような……ああ、やってしまった!きっと私を待ちわびて、眠らずにいたに違いありません。
「あ、あの、ごめんなさい、ついお喋りに夢中なってしまって……」
「いいのです、あなたが楽しければ。」
「ねえヨシくん、今夜も紗菜子を借りるわね。」
背後に立った友莉が私に抱きつき肩に顎をのせ、ニコリと笑ってそう言いました。
「何をするのです?」
「ママのお友達が主催するジュエリーとドレスの新作発表会に行くの。いいでしょ?」
驚きました!友莉ったらいきなり何を言うのでしょう!
「ドレスなら、もう義臣さんにいっぱい買っていただいたわ。」
「高校を卒業したんだから、ヨシくんの選んだ子供っぽいドレスじゃもうダメよ。紗菜子はスタイルもいいし、もっと大人っぽいのが似合うはずよ。ドレスアップしたらきっと殿方の視線を釘づけにするわ。」
「ひゃ、そんな!」
「……分かりました。ファッションセンスの良い友莉に選んでもらいなさい。次のパーティーで着ていけることだろう。」
そう言って目を伏せたまま、義臣さんはお財布からクレジットカードを一枚取り出しました。
「これは紗菜子の家族カードだ。好きなだけ買ってくるといい。」
「でも……」
「遅くなるからもう出掛けるよ。」
プイと背中を向け、義臣さんは出て行ってしまいました。
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