山田センパイ

□第1章 出逢いは突然やってくる
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始業時間は午前9時。

定時ぴったりにこのデスクに座ってから2時間17分が経とうとしている。

しかし「おはようございます。」と挨拶を交わしたきり、他に一言も言葉を交わしていない。



新入社員の相澤翔平は黙々とパソコンに向かい、データを打ち込んでいた。



彼の配属先は《営業総務部》。

3つある営業部を統括する部署だ。

そう言えば聞こえは良いが、つまりは営業部の《何でも屋》なのだ。



部員は現在、翔平の他は一人だけ。

今年の2月に長年勤めた男性社員が定年退職し、4月に入社したばかりの翔平が後釜に大抜擢された。



目の前にいる、山田センパイに熱望されて……



彼女は高卒で入社し、今年めでたく勤続十年目を迎えるらしい。

仕事は厳しく僅かなミスも許さない。

大きいとはとても言えないこの《城島商事》の営業事務全般をほぼ一人で完璧にこなしている。



山田センパイの初対面の印象はぶっちゃけ無愛想。

引継らしい話をしただけで、世間話は一切しない。

人一倍仕事に真面目なのはすぐに分かった。



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