業火の果て

□第12章 女王蜂の褥
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ベッドの上で柊の与える快楽に沙良は身体をくねらせた。

「あっ…あっあぁっ!」

漏れる吐息に柊はより激しく乳房を揉み、腰を突き上げた。

「ねぇ…中で出さないで。」

沙良は両腕で引き剥がすように柊を押さえた。

「アキに遠慮してるの?」

動きを止め、柊は組み敷いた沙良に目をやった。

返事は無かった。

再び身体を揺らし、絶頂の寸前で沙良から離れると、腹の上に自らを吐き出した。

「満足した?」

冷ややかに柊は尋ね、沙良の身体を綺麗に拭いてやった。

「もう俺に抱かれなくてもいいだろ?」

「アキは私を求めないわ…どんなにキスはしても…」

沙良は仰向けのまま目を閉じ呟いた。

「代わりに俺で済ませるのか。」

ふっと口の端を歪め、柊は立ち上がった。

「シュウ…」

「欲しいなら抱いてやる。今までと同じように。」

背を向けたまま、シャワーを浴びに行ってしまった。



学校帰り、彬従は天日の屋敷を訪れた。

由良が待っていた。

通っている高校のセーラー服姿が可愛らしかった。

「アキ、話があるの。」

「俺に?」

由良は自分の部屋に彬従を連れて行った。

沙良の部屋と違い、洋服やアクセサリーや小物など、女の子らしい物に溢れていた。

「シュウのことなの…」

彬従は手を組み聞いた。

「シュウは沙良の婚約者なのよ。小さい時にママに気に入られて引き取られて一緒に暮らしているの。」

「そうだったのか…」

彬従は愕然とした。

「もちろん、ママが決めたことだから絶対じゃない。沙良も他の男の子と何人か付き合っていたし、シュウにも彼女がいたこともあるし…」

由良はうつむいた。

「俺、この家に来ない方がいい?」

「そう言う意味じゃないの……何より沙良はあなたが好きなんだもの。」

彬従はそっと由良の頭を撫でた。

「ごめん。俺、君達に甘えていた。」

「上手く言えない…アキが悪い訳じゃ無いのよ…」

「由良はシュウが好きなの?」

コクリと由良はうなずいた。

「でもシュウは私なんか相手にしない。沙良と同じ日に生まれて同じ顔同じスタイルなのに…」

見上げたその顔は沙良と全く同じ作りなのに、印象はまるで違っている。

「由良は由良だよ。お洒落で可愛いし、何より周りを思いやる優しい子だ。」

「ありがとう…アキは優しいね。沙良が好きになるのが分かる。」

由良はぎゅっと彬従の手を握った。



彬従はしばらく天日の屋敷に行くのを躊躇った。

寮でゴロゴロしていると辻に声を掛けられ、中庭にあるコートでバスケットに興じた。

「さすがについていけねーっ!」

1on1の途中で息を切らし、ドサッとコートに仰向けになった。

「だらしねぇなあ!エッチのし過ぎで腰が立たないんじゃねえの?」

辻はへらへらとからかった。

「エッチなんかしてねぇよ!つーか、全国大会の上位常連チームでスタメンバリバリのお前の相手が続く訳無いだろ!」

「アキさん、まだまだ行けますよ!」

一緒について来た慎がはやし立てた。

彼はこの4月に入学と同時にバスケ部に入部し、一般生としては異例の一軍入りを果たしていた。

「アキさん、いつの間に華音さんと別れて新しい彼女に乗り換えたんですか?どこに行ってもモテますね!」

「マコト、お前のことマジで一回シメていい?」

彬従は笑いながら慎を掴んだ。

「美桜が心配してましたよ。遠距離恋愛無理だったのかなって。」

慎は懲りなかった。

「美桜、アキさんに逢えなくて残念がってました。」

ブウと口を尖らせた。

「あいつ、アキさんの話ばっかりするんです。ホントはアキさんのことが好きなんじゃないですか?」

「美桜は妹みたいなもんだよ。小さい頃から家族同然で育ってきたんだ。」

彬従はふーっと息を吐いた。

「マコトも女の子に振り回されてないで練習頑張れよ!」

辻が釘を差した。

「そうだ、この前ヒロトからメールが来たぜ。」

ダムダムとボールを突きながら続けた。

「アキのこと聞かれたけど、お前は寮にあんまりいないし、俺は部活しに学校に来てるだけだから分かんないって言ったら、心配してたよ。」

「あいつは元気だった?」

「ああ、華音ちゃんのお母さんの会社を手伝ってて忙しいらしい。」

祐都がまだ自分を忘れないで気にかけてくれることが、彬従には嬉しかった。

「直接言えないことがあるなら、俺が代わりに言っといてやるからな!」

「ありがとう辻……」

自分独りが遠くの地で取り残された気がしていた。

しかし、自分の存在を変わらずに求めてくれる者もあるのだ。

彬従は3Pラインからリングに向かってシュートを打った。

ボールはパツンと乾いた音を立て、ネットに吸い込まれ落ちた。

*
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