天狼の彼方

□第1章 凍土を渡る風
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葬儀場までの坂道を比江嶋蓮はゆっくり登った。

タクシーで上まで行けば良かったのだが、ふと車を降りた。



まだ信じられない…



ゆっくり歩いたからって、何かが変わる訳じゃない…



坂の上で喪服代わりの制服を着た中学生が二人、蓮を見つけて手を振っていた。

「よぉ、遅くなってごめん。」

蓮は、右手で高塔恭花、左手で石月健都の頭を撫でてやった。

二人とも泣き腫らした赤い目をして、それでも5才年上の幼なじみに笑顔を見せた。

「蓮ちゃん、いつ戻って来たの?」

「今朝、始発に乗ってきた。」

並んで通夜の会場に入った。

「お前たちの相方はどこ?」

「分からない…」

恭花と健都がちらりと目を合わせた。

「朝からどこを探してもいないんだ。」

「アキのせいじゃ無いのに…」

恭花の目から涙が零れ落ちた。



まだ準備の途中だが、棺のそばに、恭花の両親の高塔詩音と季従、健都の父石月祐都、蓮の母最相柚子葉、そして友人の大神雄太が寄り添い泣き伏していた。

「蓮!」

柚子葉が息子を呼んだ。

「良かった。パパの喪服がちょうど合って。」

「突然だったね…」

蓮は呟くように口にした。



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