天狼の彼方
□第2章 三人の彬従(アキツグ)
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「アキっ!」
「どこにいたのアキ!」
皆が赤髪の少年に駆け寄った。
しかし、少年は振り切るように棺の前に佇む自分と同じ顔をした青年に向かって歩き出した。
「待ちなさいアキっ!」
パーカーのフードを祖母の茉莉花が掴んだ。
「おばあちゃん!」
祖母の元に恭花が走り寄った。
「おばあちゃんがアキを見つけたの?」
「ええ、アキの考えることなんかお見通しよ。灯台下暗しで自分の部屋に隠れていたわ。」
「さすが茉莉花さま!」
蓮が嬉しそうに拍手した。
「あれほど髪を黒く染めなさいと言ったのにまだ赤いままじゃない。華音に恥をかかせるつもり?」
「辞めてよ離してよ!」
赤髪の彬従はジタバタと抵抗した。
「なんだこの頭は!お前いつから不良になったんだっ!」
蓮が赤い頭を押さえつけた。
「うるせぇ!いいんだよ俺の個性なんだから!」
右腕をブンと振り回し、赤髪の彬従は蓮を払い退けた。
「俺はお前を不良になるような子に育てた覚えは無いぞっ!」
蓮は激怒した。
「蓮に育てられた覚えは無いよっ!」
赤髪の彬従はいつものように刃向かった。
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