天狼の彼方
□第4章 赤髪の少年
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吉良彬従は目を開けた。
無機質なアイボリーの天井が目に入る。
日常とは違う、薬品の匂いがする。
ここは病室のようだ。
ベッドの上で身体を横に向けようとした。
何かの重みが肩に掛かっている。
首だけ曲げて驚いた。
真っ赤な坊主頭が乗っていた。
反対側から手を伸ばし、触ってみた。
温かく柔らかい、懐かしい触り心地…
逢いたくて逢いたくて、そばにいることを願い続けた、息子高塔彬従の頭だった。
「…ん。」
赤髪の少年が目を覚ました。
父と目が合うと、ドキドキと顔を赤らめ、キョロキョロと目線を逸らした。
「祐都おじさん…!」
隣りの簡易ベッドで休んでいた石月祐都を叩き起こした。
「…アキっ!」
祐都は飛び起きた。
「…ヒロト……俺、どうしたの…」
「華音の通夜に来て倒れたんだよ。ずっと昏睡状態で…時々目を開けたけど意識ははっきりしなかった。もう一週間も経つよ。」
「そうだったのか…」
大きな手で、クリクリと息子の頭を撫で続けていた。
赤髪の少年は、父親に似た大きな目を見開いた。
「ホントに俺のお父さんなの…?」
ポツリと息子は呟いた。
*