天狼の彼方
□第8章 蒼い星
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「ただいま。」
祐都はため息を吐きながら玄関を開けた。
「お父さんおかえり!」
瑤と健都が部屋から飛び出してきた。
このところ、帰宅が午前様になる日が続いていた。
久しぶりに顔を合わせる子供達に祐都はニコリと微笑んだ。
しかしすぐに二人が戸惑っているのに気付いた。
「父さん…髪が真っ白…」
健都が心配そうに見つめた。
「ああ、急に白くなったんだ。おじいちゃんみたいだろ?」
「カッコいいわよ。ロマンスグレーって言うじゃない。」
瑤は父の鞄を持ち、微笑みかけた。
「おかえりなさい。ご飯は済みましたか?」
遅れて妻の瑛が現れた。
「貞春さん達と飲んできたんだ。風呂に入るよ。」
祐都は静かに微笑んで寝室に消えていった。
「父さん、大丈夫なの?」
健都が母に尋ねた。
「お仕事が忙しかったからお疲れなのよ。家ではゆっくりさせてあげましょうね。」
瑛は息子の背中をポンと叩いて安心させた。
「やっぱり…言えない…」
瑤はふと呟いた。
東京の大学に進学することを、両親に相談したかった。
しかし、父も母も仕事で帰りが遅く、話す時間も無かった。
*