天狼の彼方
□第11章 新たな恋
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「恭花、数学の教科書貸して!宿題出てたのに忘れてきた…」
彬従は恭花の部屋のドアノブに手を掛け戸惑った。
中から楽しそうな笑い声がした。
返事を待たずにガッとドアを開けると、彼女は携帯電話で話をしていた。
「うん…うん…アキが来た。ありがとう、またね!」
電話を切った後も、笑顔のままだった。
「誰?」
「友達よ。」
「だから誰?」
「アキの知らない人。」
恭花は鞄から教科書を取り出した。
「何の話、していたんだよ。」
「英語の宿題を教えてもらっていたの。凄いのよ。問題読んでいる間にどんどん解いちゃうの!」
「恭花なら一人で出来るだろ。俺の知らない奴って誰だよ。」
彬従は追求の手を緩めなかった。
「数学の教科書よ。部屋に帰って宿題して!」
「分からないところ教えてよ。」
「アキなら、一人で出来るでしょ!」
ニコニコと笑いながら、恭花は彬従を追い出した。
「何ヘラヘラしてるんだよっ!」
高塔彬従は借りた教科書をバンと叩きつけ、ドアに八つ当たりした。
天日彬従は携帯電話を切りながらクスクスと笑った。
若い恋人の反応は新鮮だった。
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