天狼の彼方
□第14章 追悼
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悔しい…
悔しい…
悔しい…
「チョー可愛いっ!」
里緒菜は携帯電話を握りしめ悶えた。
「また見てるの、その写真!」
華蓮は呆れた。
「だって、このレンの笑顔が悔しいくらい可愛いんだもの!」
里緒菜は叫んだ。
「私も一緒に写っているのに…」
蓮の実家に向かう途中、列車で撮った華蓮とのツーショットだった。
「カレンの代わりが私だったら最高!」
「そう…ね。」
すまなそうに華蓮はため息を吐いた。
里緒菜と華蓮は、年越しを毎年里緒菜のマンションで迎えていた。
華蓮の母は気難しく躾に厳しい人だった。
中学校から寮に入り、母と顔を合わせるが億劫で、実家に帰らず里緒菜の家に転がりこんでいた。
娘が家に帰らないことを母はぶつぶつ怒っていたが、気にしなかった。
群青は年末になっても仕事を抱えていた。
それでも大晦日に一日掛けて大掃除を済ませた。
里緒菜と華蓮は少しだけ手伝い、あとはお互いの好きな映画を見ながらゴロゴロとしていた。
「ねぇ…本当にあの日何も無かったの?」
里緒菜は同じ質問を繰り返した。
「何もないわよ。」
華蓮は同じ答えを繰り返した。
*