天狼の彼方
□第17章 亀裂
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「アキーっ!早くしないと遅れるよぉ!」
恭花がリビングから二階に向かって叫んだ。
「やっと仲直りしたのか!」
恭花の父、季従が嬉しそうに新聞を下した。
「ケンカはもう辞めなさいよ!」
母の詩音も呆れ顔をした。
「恭花、今から学校に行ったら早過ぎじゃないの?」
柚子葉が朝ご飯を運んできた。
「バスケ部の朝練に出るの。佐和のお手伝いをするのよ。」
「恭花もマネージャーになりなよ。」
彬従が歯磨きをしながら現れた。
「そうしようかな。」
恭花はニコリとした。
「ユズママおにぎり作ってよ!二時間目休みに食べるから!」
「私が作るわ!」
恭花は台所に駆け込んだ。
「すっかり仲良しね!」
柚子葉はクスクスと笑った。
彬従の漕ぐ自転車で恭花は学校に向かった。
「おー!恭花も来たのか。これからアキがサボらないように連れてきてよ。」
健都がニヤニヤしながら出迎えた。
「任せて!」
ふと見ると、彬従と佐和が体育館の端で仲良く話し込んでいた。
ズキンと胸が痛んだ。
「アイツら、いつもああだから気にしないで。」
戸惑う恭花に気づいて、健都がそっと声を掛けた。
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